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3/21(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポーター、シェリーめぐみさんからの報告です!


アメリカでは春分の日を、First Day of Springと呼んでいます。
「春の最初の日」 ということなんですが、

一昨日はまた雪が降り、しぶとく冬が居座っています。

でも気分はそろそろ春!
この季節はブロードウェイの注目作が始まる季節でもあります。

映画のアカデミー賞にあたる、トニー賞が6月にあり、
これにぶつけて3月〜4月に話題作をスタートさせるんです。

そんな中から、新作を今週見て来ました。
「MOTOWN, THE MUSICAL」

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モータウンと言われてピンとこなくても、
あのマイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーが所属していたレコード会社と言えばわかりますよね?

1959年に設立して以来、「モータウン・サウンド」と呼ばれるブラックミュージックは
アメリカだけでなく世界中で大ヒットしました。

ビヨンセとジェニファー・ハドソンが出た映画「ドリーム・ガールズ」、
あの中でジェイミー・フォックスが演じていた、レコード会社の社長、
あの役は、モータウンの創立者、ベリー・ゴーディをモデルにしたと言われています。
このベリー・ゴーディ、
マイケルやスティービー、ダイアナ・ロスを世に出したプロデューサーとして
アメリカでは伝説的な存在、
この人がいなかったら、
黒人の音楽はここまで世界に浸透しなかったとまで、言われています。

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映画ではちょっと悪者な感じでしたが、
このミュージカルはこのベリー・ゴーディ自身が脚本にたずさわっているんです。

そしてミュージカルナンバーはアメリカ人ならみんな知っているモータウンヒッツ、
60曲以上も!!

ステージだけでなく客席も全編歌いっぱなし、踊りっぱなし
MOTOWN THE MUSICALを今日はレポートします!
3月11日にプレビュー公演が始まったばかり
「MOTOWN THE MUSICAL」
1週間でチケット売り上げ1億円を超え、早くもヒット中です。

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そして8日目の今週月曜日、
マンハッタンは横なぐりの雪が降る寒—い夜でしたが、
ブロードウェイのラント・フォンテイン劇場の前には長—い行列ができていました。

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「MOTOWN THE MUSICAL」の開演を待ちながら、
既にウキウキのお客さんたちに、声をかけてみました。

アイリスさんが見に来た理由は「モータウンが好きだから」
彼女が好きなのはシュープリームス

次の女性はスティービー・ワンダーの大ファン

そして最後のお母さんは、モータウン・アーティストの名前が止まりません。

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テンプテーションズ、スモーキー・ロビンソン
マービン・ゲイ、
グラディス・ナイト&ピップス
フォートップス、
スティービーワンダー
マーヴェレッツ、

そして、子供時代のマイケル・ジャクソンがいたジャクソンファイブ

アメリカの60年代から80年代を代表するトップアーティストとヒットナンバーを
まるでマシーンのように送り出したモータウン・レコードですが、
最初はとても手作りなレーベルでした。

創始者のベリー・ゴーディは1929年デトロイト生まれ、
厳しい人種差別の時代に育ち、
最初はプロボクサーになります、
音楽に転向して、1959年、30歳でモータウンをたちあげます。

黒人のレコードレーベルとして初めてヒットを連発。
でも彼の最大の功績は、
それまでの黒人音楽だったジャズやブルースではなく、
もっとポップで
白人も黒人もみんなが歌って踊れる「モータウンサウンド」を作り出したこと。

そんなモータウン誕生のストーリーと共に、
ハッピーでエネルギッシュなモータウンヒッツを歌って踊る役者たちがすごい!
よくまあこれだけのキャスティングをした!と感心するくらい、みんなうまいし、
とにかく本物そっくり!

ダイアナ・ロスも、スモーキー・ロビンソンも、
まるで本人が乗りうつったかのようなんです。

そして1曲ごとに拍手喝采、
立ち上がって踊りながら、いっしょに歌っているお客さんもいっぱいいました。
まるで歴代のモータウンの
スーパースター総出演のコンサートを見ているかのようです。

そしてオーディエンスの目が釘付けになったのが、
子供時代のマイケル・ジャクソン役のJibreel Mawry(ジブリール・マウイー)くん11歳
声もルックスもダンスもマイケルそのもの!!というくらい素晴らしい!
彼はこれからもっと有名になると思います。

そして「MOTOWN THE MUSICAL」は
ただの成功物語ではありません。

アーティストとスタッフがまるでファミリーのようにいっしょにがんばって、
これだけのヒットを飛ばしても、
しょせんはインディーズレーベル。
メジャーに大物アーティストを、
巨額の契約金で引き抜かれてしまったり、
それでも何度も不死鳥のごとく蘇りますが、
結局はメジャーレーベルに身売りせざるを得なくなってしまうんです。

そんなモータウンストーリーの一方で、
人種差別と戦ったアメリカ公民権運動や
ケネディ大統領、そしてキング牧師の暗殺など、
激動の歴史が織り込まれています。

そして、こんなシーンも出てきます。
黒人を見下している白人のラジオDJが、
モータウンの黒人プロモーターを
「ウチはブラックミュージックはかけないよ、ポップステーションだからね」と追い返す。
でもやがて、モータウンの曲が大ヒットするようになると、
白人ステーションもかけないわけにはいかなくなっていった、
そんなエピソードが象徴的に描かれていました。

一方でこうした人種の軋轢だけでなく、
モータウンサウンドを愛する白人たちは、
音楽を通してブラックカルチャーへの理解を深め、
人々の気持ちが通い合うきかっけになっていったんです。

モータウンサウンドの今の音楽シーンへの影響は計り知れませんが、
それだけではありません。
オバマ大統領も、
モータウンがなかったらホワイトハウスには座っていなかっただろう、
という人もいます。

そのオバマ大統領自身もモータウンの大ファンのようで、
2年前にはホワイトハウスにスティービー・ワンダーとスモーキー・ロビンソンを招待してコンサートも行いました。

アメリカ人にとって、
「モータウン」はまさに、SOUNDTRACK OF OUR LIVES人生のサウンドトラック。

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色々解説しましたが、
こういう歴史がわかると、ミュージカルはもちろん、
モータウンの曲を聞くときにもちょっと違って聞こえるのではないかと思います。

みなさんもぜひニューヨークに来る機会があったら、「MOTOWN THE MUSICAL」おすすめです。
そしてモータウンサウンド、聞いた事のない人がいたらぜひ聞いてみてください。
人種や国境を越えて、本当にハッピーにしてくれる音楽、
そして人と人とをつないでくれる音楽ですから。

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シェリーめぐみ  
ニューヨーク在住、フリージャーナリスト&プロデューサー。
アメリカを日本に伝え、日本をアメリカに伝える相互プロジェクトを数多く手がける。
J-POPファンのための英語サイトSAMURAIBEATRADIO.com(サムライビートレイディオ)」
ブラックコミュニティと日本をつなぐメディアHARLEM2NIPPON.comをプロデュース。
BLOG:http://megumiradio.com