震災から間もなく2年
つい先日ニューヨークである映画が上映されました。
「311ここに生きる」
ニューヨーク在住の我謝京子監督が、東日本大震災の被災地で撮ったドキュメンタリー
ニューヨークでは初めての、一度だけの上映だったのですが
多くの日本人、そしてアメリカ人で会場はいっぱいになりました
震災をテーマにしたドキュメンタリー、これまでアメリカでも何本か公開されていますが、
女性が主役というのは初めてかもしれません。
彼女たちの姿、言葉から教えられることもたくさんありました。
今日は我謝京子さんのインタビューも交えてお伝えします
我謝京子さんはロイター通信のニューヨーク特派員でもあり、
みずからの911の被災体験を綴った「母の道、娘の選択」という作品で
2009年に監督デビューしています。
その映画の上映会のために沖縄にいたとき震災が起こり、
テロと震災は違うけれども、
次の日から人生ががらりと変わってしまうという意味では同じと感じた。
それがこの映画制作のきっかけになったということなのですが、
今回上映されたのは被災地で撮影された映画、第二弾。
ニューヨークでの初上映会は立ち見が出るほどの大盛況でした。
上映後の交流会でキャッチしたお客さんは、
「ニュースを見てもわからない、被災地の人々の本当の姿を見たかったんです。」
「あれから2年、みなさんどうしているのかがわかる映画だといいなと思って来ました。」
映画の中には、自宅も職場も失い、避難所や仮設住宅に住む女性
避難所生活しながら他の被災者のために、一生懸命働く女性
そんな彼らを自分ができることで支援しようとする女性。
たくさんの女性たちが登場します。
我謝さんは、そんな彼らの毎日に寄り添うようにカメラを向けて
その姿と言葉を映画に綴っています。
映画をとる前には50人もの人と会って話を聞いたそうですが、
その結果、ある決心をしたといいます。
「この映画は、編集がとても大変になるかもしれないけれど、
ナレーションを一切入れるのをやめよう、彼女たちの声を直接、観客に届けたいと思ったので。
本当に編集が大変だったんですが、みなさんの言葉でこの映画はつなぎました。」
ナレーションなし、
被災地の女性たちの言葉だけでつないだ映画、
そのおかげでまるで彼女たちと直接話しているような気持ちになって、
とても引き込まれました。
そして、女性ならではの問題にも気づかされます。
女だから、この年齢だからもう仕事がみつからないのではという不安だったり、
さらにはっとさせられるたのは、
ある女性が余震の恐怖の中で、お味噌汁を作るシーンです。
「味噌汁を作ることで、余震と戦う。すごいなと思ったんですよ。
そういう何気ない日常生活というのがどんなに大事かということが、
破壊されるときに人々は気づくんです。」
我謝さんはさらにこう続けます。
「人間の心って強いなって思いました。もちろん折れてしまうこともありますけれど。
人はもちろん落ち込むし、泣いてしまうし、大変な事もたくさんあるけれど、
心の持ちようによって、時間とともにマイナスなこともプラスに変えられるんだなって。
もうだめだ、と思うより、今日は疲れたかもしれないけれど、明日のために何ができるのかな、と考える。仮設住宅の方々は、ゴミが落ちていて嫌だから、じゃあボランティアで自分たちで
ゴミを拾って気分よくなろうとか、そういう小さいことで女性たちが前へ前へと
進んでいることは、素晴らしいことで、本当にそれを伝えたいなと思いました。」
映画を見たこのニューヨーカーの女性も、
「あんな境遇にありながらも彼女たちは本当に強く、前向きに生きている。
とても自分と比べることはできないけれど、今の自分のくらしへの感謝の気持ちが
あふれてくる。とても強いメッセージを感じました。」
本当に見ている私たちの方が勇気や元気をいただいてしまったほど。
でもこの映画はここでは終わりません。
我謝さんにこんな質問をぶつけてみました。
この映画を作る課程で、我謝さん自身が難しい、つらいと思ったことはありませんか?
「今の方があるかもしれない。作っている時は必死で作っていたけれど、今みなさんに、
どうしていますか?とお声をかけたりしたら。。。震災復興は時間がかかるので、
2年目の方が大変かもしれない。1年目というのは本当に必死で日々の生活を立て直そうと
エネルギーも出て来るけれど、二年目になってふと彼女たちも考えたりするかもしれない。
私もこれからどうやっていけばいいのかな、という時にすごく不安になります。
これからどうやってみなさんといっしょに第3弾、第4弾と作っていけばいいのかを
すごく考えています。」
復興はこれからの方が大変かもしれない、
と被災地を思いやりながら、
今後も彼らを映画に撮り続けると決めた、
我謝さん自身の、揺れ動く気持ちも感じました。
そして私自身も、何かできることはないだろうか、と改めて自分に問いかけました。
実はこの映画には、被災地のみなさんが
タオルを使って手作りしたゾウさん
「負けないゾウ」が出てきます。
この負けないゾウ、上映後に販売されたのですが、
売り上げが被災地に送られるということで、
飛ぶように売れていました。
そしてもうひとつ、今回この会場では、
ニューヨークの被災地との交流もあったんです。
去年10月のハリケーン・サンディの被災地への
チャリティ募金も行われました。
この被災地の女性たちもかけつけ、
募金活動する日本人女性らと交流するなど、
被災地どうしを結ぶ上映会になりました。
これからも少しでも何かしたい、というみんなの思いがつながって、
少しでも早く復興が進むよう、心から願っています。
シェリーめぐみ
ニューヨーク在住、フリージャーナリスト&プロデューサー。
アメリカを日本に伝え、日本をアメリカに伝える相互プロジェクトを数多く手がける。
J-POPファンのための英語サイトSAMURAIBEATRADIO.com(サムライビートレイディオ)」
ブラックコミュニティと日本をつなぐメディアHARLEM2NIPPON.comをプロデュース。
BLOG:http://megumiradio.com