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10月17日は、アメリカ・シリコンバレーから夏来潤(なつき・じゅん)さんの報告です!

夏来 潤(なつき じゅん)プロフィール:
アメリカ・カリフォルニア州シリコンバレー在住のライター
1980年渡米。日本IBM大和研究所勤務の後、1995年シリコンバレーに移る。現地のIT業界スタートアップを経て、ライターに転向。

アメリカの日常生活を紹介したエッセイサイト『夏来 潤のページ』と
http://www.natsukijun.com/
IT業界やアメリカの最新情報を発信する『Silicon Valley NOW(シリコンバレーナウ)』を主宰。
http://www.natsukijun.com/svnow/


●さて、23日にも発表があると噂されているipad miniですが、そもそも、
日本ではまだそれほど普及していない感じのタブレット、アメリカではおなじみ?


タブレットと言えば、アップルのiPad(アイパッド)を思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、アメリカではiPadが発売される以前に、「e-Book(イーブック)」とか「e-Reader(イーリーダー)」と呼ばれるジャンルのタブレットが広く市民権を得ていました。これは、日本では「電子書籍」と呼ばれるものですが、オンラインショッピングサイトAmazon.com(アマゾン)が発売しているKindle(キンドル)が代表例となります。
もともとKindleは、白黒画面の小型のタブレットでしたが、Kindleを一台買うと、1500冊くらい本を収めることができるので、愛読者の間では一気に人気製品となりました。一般的にアメリカの本は大きくて、重いので、それが軽いKindleを持ち歩くだけで好きな本が何冊も読めると、重宝されるようになったのです。携帯電話のネットワークにもつながり、思い付いたら、公園のベンチや駅の待合室と好きな場所で本を購入できるので、その気軽さも受けました。アメリカでは、もともとパソコンを使い慣れている人が多いので、Kindleのような電子製品も、あまり抵抗を感じずに受け入れるようになったという背景もあります。そして、もうひとつの人気の秘密は、実物の本とは違って、何を読んでいるのか人に知られにくいことがあります。
アメリカでは、日本のように本にカバーをかける習慣がありませんので、何を読んでいるのかすぐにバレてしまうのですが、Kindleの画面だと他の人が盗み見しにくいので、安心して本が読めるというわけです。
最近、女性の読者の間で、とってもセクシーな本(Fifty Shades of Grey)がベストセラーとなりましたが、「電車とか空港とか人が集まる所でも、どんな本を読んでいても恥ずかしくないわ」と、電子書籍のありがたみがクローズアップされていました。


●そんな中で登場したiPadの存在は、やはり大きかった??


そんな風に、電子書籍という形で広まったタブレットでしたが、2010年4月にアップルがiPadを発売すると、タブレットという常識をまたたく間に変えてしまいました。iPadは、一年前に亡くなったアップルの共同創設者スティーヴ・ジョブス氏がもっともこだわった製品のひとつですが、大きな画面に美しいカラー。そして、指で簡単に操作できるところが、コンピュータなのにコンピュータらしからぬ製品であると大人気となりました。iPadで本のアプリをダウンロードすると、あのかわいい『熊のプーさん』がおまけに付いてくるのですが、このカラー絵本を見た人は、誰しも色の美しさとページをペラッと指でめくれるリアル感に感動したものでした。(それに比べて、Kindleで読む本はリアリティーがないとも・・・)
おまけに、iPadは、電子書籍のKindleとは違って、ゲームもできるし、ビデオも観られるし、ネットにもつながるし、立派な小型コンピュータです。そこで、アマゾンもアップルに習って、Kindleのカラー版Kindle Fire(キンドル・ファイア)を発売し、今までの白黒版電子書籍の路線を一新したのでした。ここに来て、Kindleのような電子書籍とiPadのようなタブレットコンピュータの垣根は、すっかりボヤけてしまったのでした。


●iPadは教育の現場でも人気だそうですね?


Kindle Fireは、iPadみたいにゲームもできるし、ビデオも観られるし、しかも値段も199ドルから(およそ1万6千円から)と安いので、だんだんと人気が出てきて、今では、アメリカで売られるタブレットの2割はKindleだと言われています。けれども、教育界では、iPadが圧倒的な人気を誇ります。とくにテクノロジーのメッカであるシリコンバレーでは、学校の教科書の代わりにiPadを採用する学校も増えています。
アメリカの学校では、教科書一冊が厚くて重いので、子供たちが学校に持ち帰りする鞄(かばん)も、相当の重さになります。キャスター付きスーツケースのような鞄をゴロゴロと引っ張る子供もいるくらいです。それがiPadひとつで教科書すべてを代用するので、子供たちの負担も少なくなります。教科書としても、シェイクスピアのような古典に辞書機能を備えたり、歴史の教科書にビデオを加えたり、生物の教科書に3次元の図解を加えたりと、従来の教科書と比べると機能も満載になっています。ですから、子供たちもゲーム感覚で教科書に親しむことができて、学校で学ぶこと自体が楽しく感じる子も増えているようです。ある学校では、生徒に疑問があれば先生にiPadで質問できるというアプリを使っていて、家からでも先生と密にコミュニケーションが取れるようになっています。小学校1年のある女の子は、先生に質問できるのが嬉しくて、最初のうちは「先生、今何してるの?」と勉強とは関係のない質問をして、先生を困らせていたとか。一応、「先生が答えるのは午後6時まで」と制限があるようですが、先生にとっては、ひとりひとりに対応しなければならないので、負担が増えるのは確かなようです。一方、保護者にとっては、学校からのお知らせをiPadでチェックすることができるので、タイムリーに学校の情報を得られるし、双方向のコミュニケーションもできるし、とても便利なようです。


●そして、いよいよ登場となるiPad mini、期待も高まりますね?


iPadは何と言っても一番人気のタブレットですが、アマゾンのKindleがかなりの人気を誇っている理由は、そのコンパクトさにあるでしょう。アメリカで売られるタブレットの多くは、画面が7インチ型(斜めに約18センチ)ですが、これに比べてiPadは9.7インチ型(斜めに約25センチ)と大きく、全体の大きさもかなり大きいです。しかも、アップル製品の特徴と言ってもいいくらいに、ずしりと重い(最新のiPhone 5は例外的に軽いですが)。そんなわけで、今まで、もっと小さくて軽いiPadが欲しい! という要望が聞こえていました。上着のポケットに入れて持ち歩けるような、小さなiPad。そんな要望に応えて、10月23日にはiPad miniが発表されると言われています。画面の大きさは、7インチ型と8インチ型(約20センチ)の間と言われていて、世の中に出ている大方のタブレットと同じくらいの大きさとなるようです。故ジョブス氏は、せっかくタブレットを出すんだったら、大きくないと画面の美しさや指での操作性の良さを感じないと、大きな形にこだわり続けましたが、最晩年には、世の中の意見に耳を傾けて、もう少し小型のものがあってもいいかもしれないと思い直していたと言われます。そこまでこだわってきたiPadの大きさですが、女性にとっては、小さくて、軽いiPadの登場は嬉しいニュースになると思います。わたし自身も、iPadはパソコンとiPhoneに加えて3台目として使っていますが、持っているとだんだんと重く感じてくるので、いつの間にか、テーブルの下に隠れてしまっています。軽いiPadだったら、個人的には大歓迎です。