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6/21(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、佐藤めぐみさんからの報告です!

最高気温36度!
突然熱波がやって来て、マンハッタン島はまさにヒートアイランドとなっています。

このヒートアイランド現象をやわらげてくれるのは、やはりグリーン、緑。

今のニューヨークを語るのに欠かせないキーワードがアーバン・ファーミング。
地産地消の動きだったり、都市の緑化だったり、
食の改善をめざして、オバマ夫人がホワイトハウス農園をやっていることも大きな話題です。

でもより切実なアーバンファーミングもあります。
実はニューヨークシティは、長引く不況の中、
5人に一人が貧困ライン以下で生活しているというシビアな現状があります。

そんな市民のために1000カ所以上のスープキッチンがあって、
誰にでも暖かい食事を無料で提供してくれます。

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今日ご紹介するハーレムの小さな教会、セントメリーチャーチでもスープキッチンを運営。

彼らは今年から、ここで出す野菜を、自分たちで作ることにしました。
でも、農業なんてやったこともない彼らが、アーバンファームを実現するためには、
何人もの人たちの協力がありました。
日本人もかかわっています。

ここに今年できたばかりの農園をたずねて来ました。
チャペルの横のゲートをあけると、教会の前庭が野菜農園になっていて、
畑がかわいく花壇のように並んでいます。

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出迎えてくれたのはアーバンファーム・コーディネーターのクレアさん、
そして、実際の農業のリーダーシップをとる、アーバン・ファーマーのビリーさん。

二人が案内してくれました。

「まずここ、サンクチュアリー・ガーデンには12個の畑があって、
ボランティアの手でさまざまな野菜が栽培されています。
ラディッシュ、豆、トマト、レタス、スカッシュ、ズッキーニ、
あ、あそこがブロッコリです。

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そして、教会の裏庭にも農園は続いていて、
こちらは10個の畑に、ポテト、スイスチャード、キャベツ、カラードグリーン
さまざまなハーブ、ニンジン、グリーンペッパーが育っています。

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ここのスープキッチンでは毎週月曜日60家族のために食事を提供していますが、
テーブルにフレッシュな野菜を並べるのはそう簡単な事ではないんです。
教会のフードプログラムのディレクター、 ジャネットさんはこう語ります。

「10年前までは野菜といえばフードバンクから提供される缶詰だけでした。
フレッシュな野菜が入って来るようになったのは、この5〜6年です。
UNITED WAYというチャリティ団体が、近郊農家に出資して
野菜や果物を受けとるシステムで、野菜を提供してくれるようになったんです。

この団体ではアーバンファーミングも奨励していますから、
私たちもやってみようという事になりました。」

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このUNITED WAYというのは世界規模のNPO団体で、
そのニューヨーク支部に、アーバンファーミングを奨励するプログラムがあります。
お金を出すだけでなく、この農園の立ち上げに力を尽くした
UNITED WAYのスタッフ リーさんは、

「UNITED WAYは、低所得者が十分な食事をするための
さまざまなプログラムをサポートしています。
アーバンファームもその一つで、
2001年以降、既に22カ所のアーバンファームを立ち上げに協力しました。
その中には水耕栽培のインドア・ファームがあれば、ルーフトップ・ファーム、
このセントメリーのように庭をファーム化したものもあります。
農作物の生産を通して、栄養や農業に関する知識や体験を広げるという
教育の目的もあるんです。」

こうしてまずは無事にたちあがりそうだったセントメリーの農園プロジェクト。
でももう一つ、難問が待ち受けていました。


この一帯はかつての工業地帯、
しかも土地が低いので、汚染物質が土壌に 、
特に鉛などの重金属が高濃度で蓄積していることがわかったんです。

そんな時、この人がやってきました。

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シグ マツカワさんはニューヨークで育った日系人。
専門は微生物学です。

EM、と名付けられているその技術
開発したのは琉球大学の比嘉教授。
シグさんは比嘉教授とは親戚にあたり、
彼のもとで学びたくて、留学。
その技術、EMテクノロジーを持ち帰ってきました。

「EMは比嘉教授が開発した、乳酸菌、酵母、光合成細菌を主体とし、
安全で有用な微生物を共生させた多目的微生物資材です。

このEMを使うことで、汚染物質が分解され、土壌が改良できるのです。
これをバイオレメディエーション、微生物による環境修復技術といいます。
それだけでなく有機肥料としても有効なんです。

ここではまずクリーンな土を花壇のように盛り土し、そこで野菜を栽培しています。
でもその下の土は汚染されていますから、EMをまくことで、
農業しながら、3年から5年かけて改良いていくということです。

既にここの土地に蓄積した鉛は、1年間で4割も減少したんというデータがあるそうです。

日本でも有機農法の農家などがこのEMを利用していますが、
実は東日本大震災の被災地でも、ヘドロの処理などに使われました。

それにしても日本の技術が、
ニューヨーカーの食卓に上がる野菜作りに役立っているなんてびっくり!
セントメリーのアーバンファームでは、先日初めての収穫があり、
レタスやラディッシュ、豆などで大きなサラダを作って、大好評だったそうです。

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新鮮な野菜が手に入りやすくなるだけでなく、
環境を改善し、コミュニティの活性化にもなるアーバンファーミング、
多くの人たちの協力で、ますます大きなトレンドになりそうです。


佐藤めぐみ   ニューヨーク在住、フリージャーナリスト&プロデューサー
。アメリカを日本に伝え、日本をアメリカに伝える相互プロジェクトを数多く手がける。
J-POPファンのための英語サイトSAMURAIBEATRADIO.com(サムライビートレイディオ)」
ブラックコミュニティと日本をつなぐメディアHARLEM2NIPPON.comをプロデュース。
BLOG:http://ameblo.jp/meguminy