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4/5(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、佐藤めぐみさんからの報告です!

Happy April!!

マンハッタンのオフィス街、
歩道から人がはみ出しているような、
騒音と排気ガスだらけのストリートで、今日は何だかいいにおい。。。
歩道の植え込みが水仙とヒアシンスでいっぱい!思わずハッピーな気分に!
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昨日のアメリカは、南部テキサスで竜巻が12個同時に起こるほど大荒れの天気。
ニューヨークも強風が吹いた1日でしたが、今日はうって変わって穏やかでした。

なかなか落ち着かない4月の気候の中、
日本は新入学、新社会人。。。ニューヨークの4月には新入学はありませんが、
今度の日曜日はイースターサンデー。家族で教会に行ったり、
子供たちはセントラルパークで卵探しゲームをしたり、
5番街では派手でおしゃれなボンネットという帽子のデザインを競う、
イースターパレードもあります。

そんな春のニューヨークから4月のレポートは、
BACK TO BASICS 初心に返る。

このフラワーズ FROM NYを放送しているアップタウンスタジオというのは、
その名の通りマンハッタンのアップタウン、ハーレムというエリアにあるわけですが、
どんな場所か、という話をあまりしたことがありませんでした。

いったいハーレムというのはどういう場所なのか?
アメリカのブラックカルチャーの中心地。といってもピンと来ない?

ではゴスペルが聞こえる街。。。と言ったら?
日曜日のブラッックチャーチでクワイアが歌いまくるあのゴスペルです。
ハーレムはチャーチタウンと言ってもいいくらい。
縦横3キロ四方くらいのエリアに、教会の数400件と言われているくらい。

今日はハーレムの教会ではなく、シアターで上演されているゴスペル・ミュージカルをご紹介。
なんと29年間ロングランを続けている!
「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」というミュージカルをご紹介!

1983年ハーレムで初演されて以来、29年間のロングラン、
アフリカンアメリカンが手がけた劇場作品としては、史上最長のロングランを続けているのが、
オフブロードウエイ・ミュージカルの「MAMA I WANT TO SING(ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング)」

どんな作品かと言うと、
60年代のR&Bシンガー、ドリス・トロイがゴスペルチャーチから
トップスターに巣立っていくまでのストーリーが、パワフルなゴスペルと共に展開される
まさにブラックミュージック、ゴスペルの魅力がはじける衝撃的な作品。
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2月最後の土曜日から、ハーレム127丁目のデンプシー・シアターで
「ママ」シリーズの「ネクスト・ジェネレーション」春公演がスタートしました。
1年でもロングランするのが難しいニューヨークで、これだけの長寿を保っている秘密は、
幕が開いた瞬間にわかりました。
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ゴスペルクワイア(コーラス隊)が歌い始めた時の雷に撃たれたような衝撃。
ほとんどが10代というクワイアの瑞々しくパワフルな歌声に、
全身がリズムに乗って浮んでいくようなあの独特の感覚。
歌と歌の間には、ステージに設けられたDJブースで、
ブラックラジオステーションの女性DJがストーリーを語る演出。

このDJこそが脚本を手掛けたヴァイ・ヒギンセン、
ドリス・トロイの実の妹です。
そう、この「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」はヴァイが書いた
黒人ファミリーの物語。
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実は「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」は、1988年に初来日、
大ブームを巻き起こし、主役ディアトラ・ヒックスが歌うテーマソングは
FMラジオで大ヒットしました。

今や日本中をかけめぐるゴスペルブームの種は、
ここで蒔かれたと言っても言い過ぎではありません。

その時の思い出を、ヴァイ・ヒギンセンはこう語ってくれました。

「ハーレムのミュージカルが日本に招待されるなんて、本当に光栄に感じました。
あの時日本で、私にとって素晴らしいことが二つ起きたんです。
一つは、私たちが初めて、日本のオーディエンスにゴスペルを紹介できたこと、
もっとうれしかったことがあります。
日本人というのは礼儀正しいから最後まであまり反応がないと思うけど心配しないで、
と言われていました。
ところが全然そうでなかったのです。 
すべてのオーディエンスが大拍手で笑い、涙を流し、
ハーレムのオーディエンスとまったく同じ反応だったんです。
あんなに私たちの音楽を喜んでもらえるなんて、素晴らしい経験でした。」
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この「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」が何より素晴らしいのは、
舞台で歌いまくるゴスペルクワイアはほとんど全員、ヴァイが主催する
ゴスペル・フォー・ティーンから巣立った若者たちだということです。
予算カットでニューヨーク市の公立学校には音楽の授業はないところも多い、
そんな中で才能ある子供たちが、無料で歌のレッスンを受けられるプログラムが
ママ・ファウンデーションの「ゴスペル・フォー・ティーン」です。
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ヴァイはこう語ります。
「日本人があれだけゴスペルを愛してくれたから、
ゴスペルを宗教音楽ではなく、アートフォームとして教えようという気持ちになりました。
今、ヒップホップしか聞かないティーンに、自分たちのルーツを忘れないでほしいんです。
この作品では彼らがほとばしるようなパッションとエネルギーでゴスペルを歌ってくれて、
本当にエキサイティング。
観客も、かつて作品を見てくれた人が娘や孫を連れて見に来てくれる。
そういう意味で、本当にブラックアメリカのクラシック作品になったのだと実感します。」

ブラックアメリカンクラシック。
実はミュージカルの舞台は1960年代前半という未だ人種差別が厳しい時代、
でもこの作品にはそういったネガティブな要素のかわりに、
娘を思う母の愛があふれる、まさに人種を越えたストーリー。
怒りや悲しみではなく、音楽という私達が無条件でシェアできる神様のギフトは
必ず魂に響く!というヴァイの信念がほとばしっているのです。

もうひとつ特筆すべきことは、ヴァイの娘のノエルが成長し、
この「ネクストジェネレーション」では伯母さんにあたるドリス・トロイ役をつとめている事。
ティーンたちにとってはお姉さんのようなノエルも、ヴァイといっしょに後進の指導に一生懸命。
ママ・ファウンデーションはヴァイとファミリーによる、
まるでハーレムのゴスペル大家族のような存在なんです。

ヴァイやハーレムのティーンにとって、世界中にファンがいる「ママ。。」は世界への扉。
そして日本人にとっては、魂をふるわせ、心を開いてくれる音楽への扉でもあります。

あなたももしチャンスがあったら、
アップタウン・ハーレムに「MAMA I WANT TO SING」見に来てくださいね。


佐藤めぐみ   ニューヨーク在住、フリージャーナリスト&プロデューサー
。アメリカを日本に伝え、日本をアメリカに伝える相互プロジェクトを数多く手がける。
J-POPファンのための英語サイトSAMURAIBEATRADIO.com(サムライビートレイディオ)」
ブラックコミュニティと日本をつなぐメディアHARLEM2NIPPON.comをプロデュース。
BLOG:http://ameblo.jp/meguminy