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1/26(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、佐藤めぐみさんからの報告です!

どうやら今年は暖冬のまますぎてくれそうなニューヨークの冬、

先週は芸術の冬、野田英樹さんのお芝居のレポートしましたが、
続けて今週も、日本人による素晴らしいパフォーマンス、
今度はカッティングエッジなビジュアルと音楽のコラボをレポート。

アラーキーと言えば、日本人なら誰もが知っているフォトグラファー。
ニューヨークでも日本のアートが好きな人なら知っている。

そのアラーキーの取りおろしの300枚以上の写真とコラボしたのが、
ドイツを中心にヨーロッパでユニークな活動を行なっている
ピアニスト&作曲家、 安田芙充央さん。
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そして日本でも澄んだ歌声で人気上昇中のシンガー、Akimuseさん。
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3人のコラボでくりひろげたパフォーマンスのタイトルは

「on the path of death and life」
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「生と死の道にて」というタイトルには、3/11が大きくかかわっています。

いったいどんなパフォーマンスだったのか、
今日はNYデビューの安田さんとAkimuseさんのインタビューを中心に、
レポートしたいと思います。

会場は奇しくも、3/11の直後に、ヨーコ・オノ、RYUICHI SAKAMOTO,
ノラ・ジョーンズなどを集めてチャリティコンサートを行なった、
ニューヨークの前衛音楽シーンの仕掛人、ジョン・ゾーン。彼のライブハウス、THE STONE
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地元のコアな音楽ファンに愛される、とてもニューヨークらしい場所で、
ライブの直後にふたりをキャッチしました。

-今日は今年になって一番寒いニューヨークですが、大丈夫でした?

安田「その準備はしてきたんですが、今日はみぞれが降ったりして、
ピアノをひくには逆説的にすごくいい条件でしたね(笑)手はかじかむし、面白かった。」

Akimuse「私も寒い方が力が湧く感じがあって、何とか馬力で、という感じでやりました。」

-あのジョン・ゾーンのライブハウスというのもすごいですよね。


安田「ここはまたすごいコアな場所ですね。出ている人がとんがっている人ばっかりで。
壁一面に写真がはってあるんだけど、先鋭的な人ばっかりでね。」

Akimuse「 外から見てもわからなくて、
こんなところがあるんだ、ニューヨーヨーっぽいなと思いました。」

いかにもニューヨークらしい、看板もない隠れ家のようなライブハウスで
アラーキーの写真のスライドショーをバックに、安田さんがピアノをひき、
Akimuseさんが歌う今回のライブも言ってみればとても前衛的でした。

安田「 全部で347枚かな、全部このために取りおろしです。
かなり重みを感じていました。荒木さん自身の思いがすごく強いのと、
あまり具体的な事象に関してはとらわられない方なんですが、
やはり311の後の状況をすごく写真にこめられていて。」

その写真、いかにも荒木さんらしい普通の人々のポートレートや、
妖艶な着物の女性が次々に出て来るのですが、
いつもの荒木さんの写真とまったく違って見えます。その理由は。

安田「 写真に引っ掻き傷があってね。
絆を全部一度そこで断ち切ってしまう、という協力な写真でした。
モノクロの方はね。音楽をつけるとかなり難しいというか、責任感を感じる、というか。

そう、家族や女性たちの写真はどれも引っ掻き傷があって、
それを繰り返し繰り返し見せられることで、平和な日常がもうそこから
失われてしまったことを感じざるをえません。

一度断ち切ってしまう、断ち切られてしまったところから、
何かが再生する、それはいったい何だろう、
そんなことを思いながら、いつの間にか、
安田さんのピアノの演奏、
そしてAkimuseさんの声にひきこまれてしまっていました。


寒いなか集まったお客さんはこんなふうにコメントしてくれました。

「とても興味深かった、いったいどんなパフォーマンスになるか
まったく想像つかなかったけれど、すごくよかったよ」

刺激的なパフォーマンスを終えた安田さんとakimuseさん。
でも逆にニューヨークから刺激を受けたのは自分たちの方だと言います。

安田「 来るのはすごい体力と知力がいるんで、サバイバルというか、
かなりその気にならないと。でも来てみるともらうものが多いですね。
エネルギーというか、なんかもうやけくそになる、というか(笑)パワーをもらいますね。」

Akimuse「やはり今日本がパワーがないって言っちゃあれなんですけれど、
色々な感情が入り交じっていて混沌としていると思うんですけれど、
ニューヨークに来てみて全然違う。スピードは同じくらい早いんですけど、
ものすごくみんなが自立していて元気がいいというか、
日本で気にしているようなことは一切気にならないという、貴重な体験になりましたね。」

安田「やはり月並みな言い方ですけれど、ニューヨークでライブをやって、
色々な人が出ていて、今レコーディングをしていて、色々なタイプの
色々な国から来ている人とやってね。ちょっとしたことでも
感じることがけっこういっしょだったりするので、それが拡大していくと、
例えばひとつの出来事にたいする気持ちが共有できるかな、と。
その先はちょっとわからないですね。その先にも希望を見いだしたいと思っていますね。」

その先にある希望。。

そう、今回も震災の写真を見せたり、それについて語るのではなく、
とてもアブストラクトな形で、感性にうったえることで、
人間として同じものを共有することができた、そんなパフォーマンスだったと思います。

先週の野田英樹さんも、そして安田芙充央さんもアラーキーも、
人間を愛し、日本という土地で育まれた感性で、世界にメッセージを発信している。
それはモノよりも何よりも人の心に届く、一番大切なものだと信じています。


佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers