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1/19(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、佐藤めぐみさんからの報告です!


1月は1年で一番寒い月、ニューヨーク今の気温、マイナス4度。
それでも今年はどうやら暖冬モードで行きそう。。。うれしいんですが。
コートなど防寒アイテムが売れなくて大変みたいです。
今の時期、ただでさえバーゲンシーズン。
今年は普通のデパートでさえ7割引は当たり前。
新聞広告についているクーポンを持って行くと、さらに15%引き!!!

私たちアメリカ人の99%はクーポンを集めている間に、
ビヨンセみたいに、1億円で病院改造して出産しちゃうセレブもいる!

そのビヨンセ、出産以来初めて一般ピープルの前に登場!
と大きな話題に。

実はマンハッタンに、ハズバンドJAY-Zがオーナーの、
めちゃおしゃれなスポーツバーがあるんです。
そこのリニューアル・オープニングパーティにビヨンセが登場! というので、
おとといあたりから煽りまくってました。

私も今日夕方近くを通ったので、ビヨンセのチラ見をこころみたのですが、
チラどころか人だかりしか見えませんでした。(結局来なかったそうです)

でも、今日はビヨンセの話ではありません。
日本のセレブのチラ見話です。

野田秀樹さん、先週まで2週間NYでお芝居を上演していました。
そのお芝居「THE BEE」を見てきました。

これがNYタイムスなどメディアで大絶賛!

今日は、正確にはチラ見ではなく正面から見た(しつこい)
野田秀樹さんのお芝居の観劇レポートお送りします。
ホリデーシーズンのツーリストが帰った後の、凍りつくニューヨークは
実は芸術の秋、ならぬ、芸術の冬!

この時期開かれるさまざまなパフォーミングアーツのイベントの中の一つ、
「UNDER THE RADAR」フェスティバル。
オフブロードウェイ劇場として名高いパブリックシアターと、
日本文化の発信拠点であるジャパンソサエティ、
前衛劇場として知られるラ・ママなどのコラボレーションで、
10日間に渡って世界中から集められたミュージカル、
演劇など気鋭の16作品が上演されました。

その中でジャパンソサエティがフィーチャーしたのは、
日本の天才、野田秀樹の「THE BEE」。
原作は筒井康隆と聞くだけでスゴそうでしょ?
筒井の短編「毟りあい」をもとに、

野田秀樹自身がイギリス人の脚本家コリン・ティーバンと共に英語で執筆。
4人の俳優のうち3人はイギリス人、そして野田秀樹さん自身!

2006年にロンドンで初演され絶賛を浴び、
2007年の日本公演では数々の賞を受賞。
今回も既にニューヨークタイムスなどでレビューされ、高い評価を得ています。

ストーリーは脱獄犯に妻子を人質にとられたサラリーマンが、
逆に脱獄犯の妻子を人質に立てこもり、
互いが果てのない復讐合戦をくり広げる。。。というお話。

開演前、幕の無いシンプルなステージには
中央にレトロなテレビのようなオブジェが設置されて、お茶の間な感じ。
するといきなり芝居がスタート。
男達がドヤドヤとステージに現れ、サラリーマンをとりかこむ。
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実はこのサラリーマン、井戸さんというんですが、
この井戸さんの家に脱獄犯が妻子を人質に立てこもってしまったんです。

それと知らずに帰宅した井戸とテレビレポーターのやりとりは
すごくユーモラスでスピーディなのですが、笑っていられるのは最初だけ。

脱獄犯の奥さんに説得をたのみに行った井戸さん、
そこで彼の中で何かがパチンとはじけてしまい、
今度は井戸さんが脱獄犯の妻子を人質に立てこもってしまう。
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それから井戸さんと脱獄犯のバイオレンスの応酬になるんですが、
平和を愛する小市民のはずの井戸さんは、、
自分自身も知らなかった暴力的な本性に陶酔してしまいます。
そうなるにつれて芝居のテンポは急激にスローダウンし、
おどろおどろしいシーンが展開していきます。

現実から隔絶され、最後にはその暴力が日常にとってかわってしまう。

タイムスのレビューでは
その変化を表す脚本と演出が素晴らしいと絶賛していました。

実は、サラリーマン井戸を演じる「女優」も素晴らしい。
そう、男の役を女優が演じているんです。
キャサリン・ハンターという女優さん、ローレンス・オリビエ賞も受賞したすごい方。

極められた肉体表現で演じる、小市民から犯罪者への「変態」はすごい!
もうくぎづけです!

逆に井戸が陵辱する脱獄犯の妻を演じるのが野田秀樹。
男と女が逆転してるんです。

こうした男女の逆転も含め、芝居の至る所に2重構造の仕掛けがいっぱい。
オーディエンスは見事に歪んだ感情と精神のスパイラルの中に取り込まれてしまうんです。

ところが取り込まれた瞬間、そこで芝居はジエンド。物語はまったく解決しません。
私も含め、芝居にハマりこんだまま、半ばあぜんとしたままシアターを後にしている観客もけっこういました。
後半は彼らの感想も聞いてみましょう。


芝居の余韻に興奮した表情の若者3人組に声をかけてみました。
ハビアとビクターはキューバから、そしてヨースケさんは日本からの学生です。

「すごくシリアスなテーマだと思った。犯罪者と普通の人は表裏一体。
普通の人でもギリギリまで追い込まれるとクレイジーになるし、
すごくクレイジーな人がノーマルになったりもするんだね。」
「すごくユーモアのセンスがあって、素晴らしくエンターテイメント性も高い。
そして男女が逆転することでシリアスな中にユーモアの入る余地を残しているの素晴らしいと思った」
「普段自分でも映画をつくっているので、野田さんの英語の芝居は初めてどんな感じかなと思ったんですが、まわりのアメリカ人の評判もよくて、なんか勇気づけられる感じでした。」 

野田秀樹さん自身はこの作品に関して、
911からイラク戦争への報復の連鎖からインスピレーションを得たとコメントしています。

私が感じたのは19〜20世紀の前半まで戦争を繰り返した日本人としても、
自分たちの民族の歴史を見つめるヒントになるのではないかということだったりします。

とにかく日本人にも世界の人にも、もっともっと見てほしいと感じました。


「THE BEE」はニューヨークの後ロンドン、香港とまわり、
同じキャストでの東京公演(2012 年2月24日〜3月11日 水天宮ピットにて上演) 、
さらに日本人キャスト(宮沢りえ他)での全国公演が続きます。
Check it out!

「THE BEE」舞台写真:撮影:内河路美

佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers