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6/23(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、佐藤めぐみさんからの報告です!

既に真夏のニューヨーク、
世界の交差点、タイムズスクエアは、
ものすごい数のツーリストであふれかえっています!

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しかも本当にカラフル、さまざまな肌の色の人々、サリーを着たインド人ファミリーがいるかと思えば、お揃いのTシャツを着た修学旅行の小学生の団体、
本当にここは世界のエネルギースポットです!!

そのタイムズスクエアから1分のブロードウェイで、見ました!
ミュージカルバージョンののスパイダーマン

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正式タイトルはSpiderman Turn Off The Dark
制作予算60億円、
音楽はU2のボノとエッジ、演出はライオン・キングのジュリー・テイモア
天才が集まったスーパーヒーローのスーパーミュージカル!

たしか2月にレポートした時は、もう何ヶ月もプレビュー公演をしているのに、
正式にオープンしない。危険なスタントでけが人も続出。。。とお伝えしましたが、

延期の回数トータル6回!
呪われたミュージカル? とまれ言われたのがついに正式に開幕!
ブロードウェイに新たな歴史が刻まれました。
6月14日(火)マンハッタン42丁目のフォックスウッドシアターで
ついに正式に開幕!

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6回の延期の末、ようやく正式オープニングにこぎつけた、
そのいきさつが内容に劣らずドラマチック。その経緯を振り返ってみると。。。

まずSpidermanのミュージカル化が計画されたのは2002年実に9年前。
2007年には制作がスタートしていたにもかかわらず、たびたび中断。
2009年には20億円以上の深刻な財政難に陥ったとも報道されました。

ようやく去年2010年、11月28日からプレビューがスタート。
ブロードウェイの慣習では、プレビューの間にセットや脚本を微調整し、
一旦正式にオープンしたらせりふ一言変更してはいけません。
ふつうこのプレビューは2〜3週間なのですが、実際には半年以上続く異常事態になってしまいました。
その最大の理由は、12月にはスタント俳優が落下して大ケガするという事故。
またストーリーも、「アメリカ人が見てもわからない!」と大不評で、
内容を見直す間にオリジナルの監督で作品の土台を作り上げたジュリー・テイモア(ライオン・キングで有名になったカリスマディレクター)が辞任、
結局脚本は大幅に書き換えられ、音楽を担当したU2のボノとエッジも曲を書き直したといいます。

いったいどんな作品になったのか? 正式オープンから3日目の先週木曜日
ドキドキしながら見てきました。
チケットはもちろんSOLD OUT。
既に夏休みシーズンも始っているアメリカ、
お客さんは年配で身なりのいいのいかにもブロードウェイの常連客、カップル、家族連れ、世界中からの観光客。全身スパイダーマンのコスチュームの子供。。。

いよいよ幕が上がると。。

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© Jacob Cohl

オープニングはシルクドソレイユを思わせるドラマチックで幻想的なシーン、
めまぐるしく変っていくセットとビジュアルエフェクトはさすが60億円の豪華さ!
全編を通して、マーベルのコミックブックの世界が、ハイテク、ローテク、あらゆるアイデアと工夫を総動員してマジカルにアーティスティックにくり広げられ、「さすが」と思わせる場面ばかり。
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© Jacob Cohl

たとえば、ものすごいハイテクCGの向うに、おもちゃの電車が走ってたり、
スパイダーマン、ピーターがぶらさげているカメラが紙でできたハリボテだったり、
かなりユニーク。
そして、世界のコスチュームデザイナーEIKO ISHIOKAが作った悪役ミュータントたちの衣装?も目を見張る素晴らしさ!

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© Jacob Cohl

さて、問題のストーリー。
心配していたんですが、とってもわかりやすい筋になっていました!
これなら英語があまりわからなくても楽しめます!
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© Jacob Cohl
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© Jacob Cohl
そして音楽、ミュージカルではストーリーを紡ぐ最も重要な存在が音楽です。
ボノとエッジの世界がスパイダーマンワールドとどう合体したのか気になるところですよね。
これはさすがのボノとエッジも苦心したのかな? と思いました。
U2らしい個性のあるリリカルな楽曲もあるんですが、
全体にわかりやすいミュ−ジカルナンバーに、ちょっとひねりを聞かせた感じの曲が多い印象でした。
当初は保守的なブロードウェイと、U2という対極のイメージのギャップが話題を呼んだんですが、結局U2の方がかなりブロードウェイ側に歩み寄ったのかもしれません。

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© Jacob Cohl
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© Jacob Cohl
圧巻だったのはやはりアクロバット。特に空中戦のシーンはすごい!
このスタントだけでもブロードウェイの歴史に残るものになるはず!
スパイダーマンが舞台を飛び出して、いきなり私たち客の頭上を縦横に飛び始める。
ハイスピードでかなりの低空飛行だから、落ちて来るんじゃないかとハラハラドキドキだ。
さらに敵のグリーンゴブリンとやはり客席の真上で空中戦、ぶつかりあう二人に接続したワイヤーも超高速で動いているから、からんだりしないのか? と心配になるけど大丈夫。すごいテクニック!

見終わった直後のオーディエンスたちは
「すごくよかった、楽しかった。スパイダーマンが飛ぶシーンが最高。
音楽も良かったけどダンスがも素晴らしかった。」
「とてもよかった、すごく楽しめた、アクロバットシーンがよかった」と絶賛の嵐!

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© Jacob Cohl

ところがこれだけのアクロバットにも満足してないお客さんもいました。

すでにプレビューを見たお客さんは、プレビューの方がよほどエキサイティングだった、というという人が多いんですよね。

プレビューではそのおかげで失敗や事故が続き、様々な変更を強いられたわけだから皮肉です!

新聞やウェブなどの批評も軒並みそのへんをついて来ています。
NYポストは「空を飛ぶシーンは欠陥がなくなった結果、ものすごいと驚かせる部分もなくなってしまった」
ローリング・ストーン誌は「事故のおかげで、誰もがスリルを求めその危険なスタントを見たいを期待するようになったが、ふたを開けてみるとその危険な輝きは消えてしまっていた」

厳しい!
こうなると、もう2度と見られない初期のプレビューの方が価値があったかののように聞こえますが、未完成はあくまで未完成。
特に2.0に対しては「ストーリー運びがしっかりして、全体にソリッドになり、ずっと良くなった」とちゃんと評価も与えられています。

“スパイダーマン・ターン・オフ・ザ・ダーク“は、アメリカ人なら誰でも知っているマーベルのコミックの世界を、ジュリー・テイモアという希代の演出家とU2の力で、まったく新しいシアターエクスペリエンスに作り上げようという、企画だけでも感動を呼ぶほどの野心的な試みでした。

全部が成功しなかったかもしれませんが、それでも十分楽しめる。
もちろん他のミュージカル作品とは比較にならないスケール感は保障つき。
誰が何と言おうと歴史に残る作品である。批評が良かろうと悪かろうとヒットする、
最初から「格」が違うんです。

当分ロングランを続ける事は間違いないから、
あなたもぜひ見に来て、自分の目で確かめてみてください。

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佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers