ニューヨークは卒業式のシーズンに突入です!
こちらの大学や高校の卒業式は、有名人がスピーチすることが多いんです。
オバマ大統領は、メンフィスの高校でスピーチしました。
ニューヨークのブルームバーグ市長は、
ワシントンDCのジョージワシントン大学でスピーチ
「将来が不安でも安全パイはとるな。やり直すことや変化を恐れるな」
いかにもアメリカらしいスピーチですよね。
アメリカではよく、日本は変化が遅いとか保守的と言われますが、
それとまったく逆なのが、アートの世界。
特に、MANGA!!
日本のマンガが世界で熱烈に愛されている理由のひとつに、
常識をくつがえすような、斬新なイマジネーションの世界があります。
日本の伝統とかコンサバなイメージとのギャップも、
また興味をそそるんですね。
ところで日本でもマンガ家の先生と会うチャンスってあまりないと思いますが、
ニューヨークのファンにとってはなおさら。
そんなファンにとっての最高にうれしいイベントが、
先週ニューヨークの紀伊国屋ブックストアでありました。
リストランテ・パラディーソなどで日本でも若い女性を中心に大人気のマンガ家、
オノナツメさん、ご存知ですよね?
オノナツメさんがトロント・アニメフェスティバルの帰りにニューヨークに立ち寄って、
アメリカ人ファンの前で公開インタビューを開催。
その司会を私が担当しました。
オノナツメさんといえば、イタリアのイメージですが。。。
実はニューヨークとも強い縁で結ばれていました。
今日はオノナツメさんのイベントのもよう、そして久々に日本のマンガ事情をお伝えします。
Ristorante Paradiso © 2006 NATSUME ONO/OHTA PUBLISHING CO.
リストランテ・パラディーソ、さらい屋五葉、NOT SIMPLEなど
独特の絵柄と、人間の深層心理まで描くディープなストーリー展開で、
独特の世界観を描き出すマンガ家、オノナツメさん。
かけつけたファンの8割は女性、オープニングに、
「みんなの好きな作品の名前を教えて!」とたずねたら、
さまざまな作品の名前が飛び出しました。
SARAIYA GOYOU © 2006 Natsume ONO/Shogakukan
リストランテ・パラディーソではイタリア
さらい屋五葉では江戸を舞台にしているオノナツメ作品ですが、
実は、ニューヨークを舞台にした作品もあるんです。
「COPPERS」という作品
カッパーズというのは警官のことで、ちょっと古いスラング。
ナツメさんにとってニューヨークってどんな場所なのでしょうか?
「今回のニューヨークは2回目です。
1回目はCOPPERSを書く前に取材に来たんですが、
舞台にする地域は決めていたので。。。
ブロンクスとかクイーンズとかを、ジャーナリストの方といっしょに取材でまわりました。
怖かったですね、車の中からなるべく出ないようにと言われましたから。(笑)
ニューヨークに来てすぐに、マンハッタンも見ないうちにブロンクスに行ったんです。
観光で言ったらなかなか見られない場所で、
なかなかできない体験をさせてもらったと思います。」
ナツメさんはいったいなぜ、ニューヨークの警官をテーマの漫画を書こうと思ったんでしょうか?
「NYPDに興味を持ったのが、子供の頃に日本で見たNYPD(ニューヨーク市警)の
ESU(特殊部隊)をテーマにしたドラマで、それがすごく好きだったんです。」
本当のNYPDを知るために、ちょっと危ないニューヨークの奥まで踏み込んで行ったんですね。
愛らしい眼鏡ッ子という雰囲気のナツメさんとは思えないガッツにファンもびっくり。
実はイタリアのマンガを書くために、イタリアには1年間留学していた事もあります。
この後もおしゃべりはとても盛り上がって、最後はサイン会。
好きなキャラクターを直筆で書いてもらって、ファンは大喜びでした。
彼らがなぜオノナツメさんが好きなのか聞いてみました。
まずブックストアで働いているというサンドラさんは、
「彼女はとても才能がある作家だと思うわ。
最初に読んだのは「NOT SIMPLE」でものすごく感動してしまったの。
普通の本もたくさん読むけどこんなに感動することはめったにないわ。
それからオノナツメ作品すべてを読みあさったの。」
not simple © 2006 Natsume ONO/Shogakukan
続いてニッキー。
「いやーなんていうか、ストーリーも絵のスタイルも
他のマンガ家とは比べ物にならないくらい素晴しいしユニークなのよね。」
そしてとても上手な日本語で答えてくれたのはイシさん。
「物語とアートワークがもう素晴らしい! とてもインスパイアされます。」
アメリカにだんだん定着してきた日本のマンガ。
日本のように、駅の売店でマンガ雑誌が買えるほどではありませんが、
普通の大手ブックストアチェーンには必ずマンガのコーナーがあるほど、
アメリカでの日本のマンガの売上げは、
2004年頃から急上昇して、2007年がピーク。
その後は歴史的な大不況と、本離れの影響でダウンしています。
アニメが大ヒットした「ナルト」以降、爆発的なヒットが出ない事も影響しています。
一方で、ナルトやポケモンのように、子供だけのものだったマンガを、
成長した20代の若者や女性が読むようになってきたのがここ数年の傾向です。
前半に登場してくれたオノナツメさんもその代表です。
もうひとつ、日本では携帯で本やマンガを読むのは当たり前と思いますが、
アメリカではまだまだ。
かわりに、アマゾンKINDLEのような電子ブックリーダーがすごい勢いで普及してきています。
電子ブックマーケットでのマンガの未来も期待されています。
では最後に、今週日曜日に発表された、
ニューヨークタイムスの最新マンガチャートからトップ5をお伝えしましょう。
TOP 5
#5 BLUE EXORCIST VOL. 1 BY KAZUO KATO 青いエクソシスト第一巻
#4 BAKUMAN VOL. 4 BY TSUGUMI OHBA バクマン第4巻
#3 BLACK BUTLER VOL.5 BY YUNA TOBOSO 黒執事 第5巻
#2 MAXIMUM RIDE VOL. 4 BY JAMES PATTERSON
アメリカを代表するベストセラー作家ジェームス・パターソンの原作を、
日本語のマンガスタイルの劇画にしたアメリカ発のオリジナルコミックス、
マキシマム・ライド第4巻
こういうアメリカのマンガが逆輸入される日も来るかもしれないですね。
そして
#1 BLACK BIRD VOL 8 BY KANOKO SAKURAKOJI ブラックバード第8巻
少女マンガがナンバーワンになるのも新しい傾向ですね。
今週はチャートインしていませんが、
ナルトの新刊が出れば、もちろんトップになります。
ポケモンやナルトでマンガを読み始めたキッズが、成長してオノナツメを読む、
アメリカのマンガジェネレーション広がっています。
佐藤めぐみ ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers