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8月10日(火)スウェーデンのストックホルムに15年以上、お住まいで、現地でパン屋さんをされているArvidsson井上 佳子さんです!

<ザリガニ漁解禁&ザリガニパーティーについて>
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デニムのワンピースを着ているのがArvidsson井上 佳子さん。
青白チェックのシャツが夫のヤコブさんです。 


★一緒にザリガニパーティーをしたご家族。
ピーターさん&マーリンさんご夫妻は、北のキルナ出身なので、ザリガニは勿論、毎年Surströmming・スールストラミングと呼ばれる発酵ニシンを食べます。(日本でもTV番組など異臭でよく紹介されているのでご存知の方も多いかもです)。地元人ならではの美味しい楽しみ方を教えてくれるので、今年も発酵ニシン、一緒に食べようと話してます。今から楽しみです♪
もう一家族はフレデリックさん&靖子さんご夫妻です。


◆Kräftskiva(ザリガニ酒宴)


スウェーデンの夏の風物詩に、ザリガニがあります。毎年8月になると、スーパーには国産・輸入と沢山のザリガニが並び、店内もザリガニパーティーグッズで賑わいます。各地でこのザリガニを肴にクレフト・フィーバという酒宴が催され、陽気な歌声の社交の場になっています。


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今回ストックホルムからザリガニ・レポートをするに当たり、改めて現地の百科事典で調べてみました。この国でザリガニが国民的に食べられるようになった歴史はそれほど古くなく、北欧では16世紀に文献があるものの、昔は聖書の教えあって多足動物は食用しなかったとか(かつて貧乏人が食べるものだったとかいう人もいて・・・)、中世から既に修道院等で食べられていたドイツ等から1700年代後半に上層階級に広まり、1800年代後半迄に一般化、当時のフィンランド流に茹でたてを熱いままを食していた、云々。今はディルと茹でて甘塩っぱい漬け汁につけ、程よく味が染込んだ冷製(もしくは冷凍品を解凍)のザリガニを、ビールやアクアヴィットという香草入りのジャガイモ焼酎と楽しみます♪

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★今年の現地新聞での比較テストでも評価が高かったトルコ産や、国産のスモーランド産のものを3家族で持ち寄り、番号つけて利き酒ならぬ(アクアヴィッドやビールも何種か試しちゃんぽんです)利きザリガニを。


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かつては国中どの湖沼や川に川ザリガニがいて、一年を通して捕獲し食べる事ができたそうですが、尾の塩漬けが人々の重要な輸出品・収入源だったので密漁や乱獲が重り、数が減り保護の為禁漁に。年一度、秋口の解禁となりました。毎年8月第一週にザリガニ漁が解禁になると、国民はこの<旬>の味覚を楽むようになり、その名残で一年中冷凍ものが食べられるようになった現在も、昔の慣習に従いこの時期出回るその年のザリガニに、国民は舌鼓を打ちます。


カレンダーに今年のザリガニ喰い?の初日は8月12日、発酵ニシン(日本のくさや、のような海外でも有名な珍グルメです。ザリガニと並んで8月が旬・北部で主に食べられます)の初日は19日とありました。どちらも木曜日ですね。


原産の川ザリガニは、1900年代初頭に流行ったザリガニ・ペストで全滅してしまったそうですが、その後信号ザリガ二と呼ばれる種を海外より取り寄せ、養殖して放水したものが再び国中に広まりました。現在では網や籠などで捕獲する際、水域やライセンスを所有しなくてはならないので、今では国産ものは貴重で高価、自家製秘伝の漬け汁で自ら捕獲のザリガニを振舞う、などというのは主人にとって客人への最高のおもてなしであると言われます。ザリガニ漁について言及すると、正確には毎年8月の最初の木曜日、17時になると一斉に川や湖に籠や檻を沈め、夜間にザリガニ達が入り眠るのを待ちます。夜が明けるとザリガニが目を覚まして逃げてしまう(出れちゃうの?最近は出れない仕掛け籠も勿論あり)ので、日の出前に早起きして捕獲するのだそうです。金曜の晩は宴。こうして秋中、昔は楽めた国産ザリガニだそうですが、今では外国産の2倍3倍の値段、レストランでも数匹でおいくら?の食通向きの品。毎年消費される大半のザリガニはこちらの味付け・包装で輸入された冷蔵、又は冷凍のトルコ、スペイン、アメリカ、中国産です。


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ザリガ二パーティをするとなったら、お月様の顔をモチーフした独特のランプシェードや布または使い捨てのザリガニ模様のテーブルクロス、スナップ(酒)用のグラスに、皿、三角帽子等ザリガニグッズでテーブルセッティング、アクアヴィットを冷凍庫できりりと冷やします(凍りません)…酒は大事です。つけあわせにはパンやクミンなどスパイスの入ったチーズ等。ザリガニは大皿にディルの花冠と共にてんこ盛りに。


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歌集も忘れてはなりません。ご丁寧に手作りの分厚い!?歌集を1冊ずつ用意する気合の入る家庭や職場仲間の集いもあります。親切にも、ザリガニ酒盛り歌など印刷されているテーブルクロスや紙ナプキン、大人用まいかけ等も販売されたりしていて、これに誕生パーティの子供達がかぶような尖がり帽を、大の大人達が被って酒宴は始まります。がたいの大きいスウェーデン人のおじさま達が赤ら顔でパーティー帽を頭に大いに飲んで歌う明るい!?光景は微笑ましく、家族や仲間同士で盛り上がるのも一興です。


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お味は海老?蟹?のような!?食感はシャコが近いです。 食べ方ですが、まず自分の皿に1、2匹とり置き、
①裏返してザリガニの外殻から美味しければチューッと汁を吸います。大抵のものは音を出して食べないマナーの国ですが、このザリガニだけは例外。豪快にどうぞ。
②はさみの部分をかじったり、専用フォークで掻き出し堪能。周囲皆静かになります。
③頭の部分を外してかに味噌をすくって堪能、えらの部分に吸い付き汁を吸います。頭は後で何個食べたか競争・自慢したい時の為に皿の端に並べて置いていきます。
④胴体部分。殻を剥いて尻尾の肉厚の部分を取り出し(卵があるかも)、背中の内臓をとって一口です。食べる部分が少ないので、一匹ではお腹一杯になりませんが完食。


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途中、誰からともなく『スコール!』と乾杯の音頭がかかれば、ナプキンでおもむろに指を拭きアクアビッド(スナップスとも呼ばれる)やビールの杯を手に合唱です。元気に一曲歌い終わると、スコール!と叫び、一飲みして満足そうに皆目を見合わせてうなずき合いグラスをテーブルに置く、独特の乾杯法が。


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またザリガニ喰い、のリピートで間にパンやチーズもつまみながら、時々回ってくる回収皿に剥き殻を入れて(頭はとっておく)皿を綺麗にして、同様に回ってくる大皿から又好きなだけザリガニを採り、食べて飲んで歌って、楽しい宴は続きます。今夏はスウェーデンも暑かったので、ザリガニも大きくジューシーなものが期待できるそうです。水温が高くなりすぎると死んでしまいますが。50年代は30cmにもなる大物が沢山採れた場所もあったそうで、今ではミンク繁殖や汚染の弊害でザリガニや魚が殆どいなくなったと聞くと残念。環境保護や自然浄化で、この国の湖や川の多くが再び昔の生態系を取り戻しますよう。


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★大きなザリガニ!!


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アメリカ・ルイジアナでもケイジャン風味付けのザリガニを、茹でたてで楽しむそうですね。日本でもザリガニを食べる地方があるようです。北海道産は築地に卸されているようですね。因みにスウェーデン流のザリガニは、毎年日本でも7月に六本木のスウェーデンレストラン、リラ・ダーラナさんで食べられるようです。
シェフの遠藤さんにお問い合わせを。


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★六本木のスウェーデンレストラン、リラ・ダーラナ遠藤さん


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★日本産のザリガニ


因みにスウェーデンでは酒税が高いので、アクアヴィッドも今では日本のIKEAでの方がお安く手に入る!?という噂です・・・。