« 6月1日(火)ポーランドに住んで14年、「ショパン研究家」をされている寺門祐子さんです! | メイン | 【Webラジオ】6月2日(水)ノルウェー オスロ »

6月2日(水)は、ノルウェー オスロ在住のフラワーレポーター、江口京子さんからの報告です!

江口京子さんは、オスロ在住6年。大使館秘書をしていらっしゃいます。
  
★夏至のお祭り
    
太陽の季節がやってきた。6、7月といえば真夏。毎日天気の良い日が続き、人々は1分1秒を惜しむように外に出て日を浴びる。
日に日に日照時間が長くなり、ここオスロでも太陽が沈むのが22時過ぎ、その後薄暗くはなるが、真っ暗になることはないまま、明け方の3時には空が赤みかけてきて、4時には再び太陽が顔を出す。
ヨーロッパ最北の岬フィンマルク地方のノールカップでは、「真夏の夜の太陽」が観測される。太陽がぐるぐると空の上を回るだけで、地平線に太陽が沈まない現象だ。北極圏の都市トロムソより北の地では、5月14日から、7月30日までの約3ヶ月間太陽が沈むことはない「白夜」となる。逆に冬の4ヶ月間は太陽がまったく顔を出さないのだ。
   
一年の間で一番日が長い日、「夏至」。ノルウェーでは古代からこの日を祝ってきた。今日でもその祝いは古代に負けないほど大切にされている。
夏至には、海岸沿い、または島々に焚き火をつくり、それを船から、または陸上から祝うのが慣わしだ。夏至祭のメッカといえば海外線の美しい南ノルウェー。そこで今年の夏至は南ノルウェーのなかでも、夏至のお祭りで特に有名なグリムスタッドに足を延ばすことにした。ロイヤルファミリーも夏至にこの地を訪れることがあるという。
   
オスロから車で南下していく。途中ノルウェーで一番古い町トンスバルグや、ラルビッグを通る。途中、美しい海に面した小さな港町で昼食をとる。ドライブを続けていくと、下から上までらせん状に道が続いている、螺旋階段と呼ばれている道路を通る。左右に海が見えてとてもダイナミックなドライブが楽しめる。
  
さらに2時間ほどすると、今回の旅の目的地グリムスタッドに到着した。白い家が並ぶ海に面した美しい港町だ。道端で子供たちが野花を摘んでいる。今回の旅行の案内人である友人クヌトーラも、野花をたくさん摘んで花束を作り始めた。何に使うのか不思議に思いつつ、買い出したバーベキュー用の食材をもって港に向かって歩いていく。
港では、町の住民がそれぞれのボートをお花できれいに飾っている。そういうことだったのかと納得しながら、私達もボートをお花で飾り、荷物を積込み、町の中心に向けてボートで出発する。
海に出ると、四方八方から数え切れないほどたくさんのボートが、町の中心に向かって進んでいる。ここでは、一家に一台ボートを所有しているそうだ。町に近づくと、ジャズバンドの心地よい音色が町中に響いている。コンサートが開かれているのだ。地上から聞いている人、ボート上から聞いている人など様々だ。
これだけのボートの数、町の中心の港は大渋滞だ。ボートからボートに飛び移れるぐらいひしめき合っている。クヌトーラが、棒を私に渡してそれで隣のボートを押すようにいう。どういうことか分からずに、きょとんとしていると、隣のボートの人が棒で私達のボートを押してくる。実はこの棒、ボートとボートが衝突して傷がつかないように、お互いに押し合って衝突を回避するためのものなのだ。
まわりを見渡してみると、大小様々なサイズのボートがある。一番大きいのは、グリムスタッド出身のノルウェー1の大船主のウグランのボートだ。そして一番小さいのは、5歳ぐらいの男の子が一人でのっているドラム缶を改造して作った、一寸法師が乗っているような船だ。他のボートに負けじと一生懸命オールで漕いでいる。あまりにも小さすぎて一瞬見逃してしまいそうだ。他にも、ボート中花いっぱいに飾ったロマンティックなボート、帽子や一緒に乗っている犬にもお花を飾っている人々。一番にぎやかなボートといえば、バイキング船だ。木製のアンティークの大きなセイリングボートに、バイキング姿に変装した子供、大人達が刀をもって暴れている。マストのったり、ロープを伝って、でんぐり返しをしたりしている。
この後、誰が一番小さいボートか、一番大きいか、また花飾りが美しいかなどそれぞれの優勝者が決められる。そして、翌日の地方新聞に大きく写真が載るのだ。
  
お祭り気分を満喫した私達は、今夜のバーベキューの場所を探しに、再び海に出る。途中ボート1隻が通るのがぎりぎりのせまい運河を抜けていく。岩肌がボートすれすれまでせまってくる。この運河の上には、木製の古い橋がかかっている。ディズニーランドの「トムソーヤの冒険」のようで、海賊が陰に潜んでいて、今にでも出てきそうな雰囲気だ。
  
運河を抜けると、小さい島がいくつも重なりあって、その間に水が流れているような地形のところに出る。南ノルウェーの海岸沿いに広がる独特の地形で、「シャールゴール」という。これは、海に無数の島が浮かんでいる地形のことで、島がたくさんあるため、ここが海だといわれてもなかなかぴんとこない。日本でいうと松島のようなところだが、1つ1つの島が大きいので全体が見渡せないのと、この地形のエリアが広いところが特徴だ。
   
私達は馬蹄型をしたちょうどよい島を見つけた。船を慎重に岩に近づけて、岩に飛び移る。そして船を固定してから、早速バーベキューの準備を始める。火を起こしている間に、私達数人は、網を固定する石、マシュマロをさす木、またトイレに使えそうな適当な場所を探しに島に探検に行く。今夜のメニューはさけ、肉、野菜、そして焼きおにぎり。デザートにはマシュマロとコーヒーだ。炭火焼のお肉、魚はとてもおいしい。
   
もうすでに夜の10時だ。あっというまに楽しい時間が過ぎた。船長のクヌトーラが、次の目的地に向かう時間だという。後片付けをして、再び船に乗り込む。今度は運河を通らずに、たくさんの島々の間を通り、波が荒い外海に出る。そこから、町の中心に向かって進んでいく。
そうこうしているうちに、どこからともなく夕食を終えた何百隻ものボートが、町の外にあるひとつの島をめがけて集まってきた。夏至最後のセレモニーだ。
   
この島では日が沈むのと同時に、大きなキャンプファイヤーに火がともされる。この薪火は、島まで運び出された木材や家庭の不用品だ。クヌトーラによると、昔は古くなった木造の船が使われていたそうだ。そのため今よりもずっと迫力があり、子供心にとても印象的であったそうだ。
船で島の周りをぐるぐるまわりながら、その瞬間を今か今かと待つ。3、2、1。歓声が上がる。火が点火された。周りの船、人々の顔、海面がこの巨大なキャンプファイヤーで明るく照らされる。そして、皆船上からこの燃え盛る火をじっと見つめるのだ。
一年で日が一番長い日、ノルウェー人にとって一番すばらしいこの時をかみしめながら。
     
●ノルウェー語で役に立つ一言
Hyggelig
ヒッゲリ
   
-お会い出来てうれしいです
-いいですね
などなど、この一言で済んでしまいます。
  
南ノルウェー クラーゲロ
boats.jpg
  
%E6%B5%B7.jpg
  
%E8%91%89%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%81%AE%E3%81%8A%E9%9D%A2.jpg
  
↓昨年オスロでの夏至の写真
CIMG0540.jpg
  
CIMG0545.jpg
  
CIMG0551.jpg
  
CIMG0560.jpg