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6月1日(火)ポーランドに住んで14年、「ショパン研究家」をされている寺門祐子さんです!

◆この時期の気候は?


ポーランドでは5月6月は緑にあふれた一番美しい季節です。ポーランドの冬はとても寒く、長いので、太陽の光がふりそそぐこの時期を毎年誰もが待ち望んでいるのです。この冬は特に寒さが厳しく、雪も多かったので、本当に待ち遠しかったです。ところが、今年は5月に入って、曇りの日が多く、気温も低めでがっかりしていました。


◆今年は、ショパン生誕200年の記念の年。


今年最初の盛り上がりは、ショパンの誕生日の頃でした。実はショパンの誕生日は2説あります。洗礼証明書に書かれている2月22日と彼自身と家族が祝っていた3月1日ですが、現在では3月1日説のほうがやや有力となっています。いずれにしましても、大きな催しはこの2つの日付に挟まれた時期に行われました。特に注目されたのは生誕記念コンサートでしょう。イーヴォ・ポゴレリッチ、マレイ・ペライア、ダニエル・バレンボイムなど世界的なピアニストによる演奏会が2月22日から3月1日まで毎日続きました。3月1日は3回も演奏会がありました。まず11時にジェラゾヴァ・ヴォラのショパンの生家でギャリック・オールソンのリサイタル。5時にワルシャワの王宮でレイフ・オヴェ・アンスネスのリサイタル。そして、8時にはワルシャワの国立オペラ座でユンディ・リ、ダン・タイ・ソン、ギャリック・オールソン、フランス・ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、アントニ・ヴィット指揮ポーランド国立フィルハーモニー管弦楽団によるガラ・コンサートが行われました。町中にもポスターがたくさん貼られ、大きな広告も見られました。


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▲ワルシャワのラ・フォル・ジュルネのポスター。


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▲ショパンとワルシャワをテーマにしたポスター・コンクールの受賞作品。


ただ、非常に残念なことに私はちょうどその時期、とても忙しくて、演奏会をはじめいろいろな催しを堪能することができませんでした。
また、3月1日には、新しくなったワルシャワのショパン博物館の開館記念式典も開催されました。今はその頃に比べると少し落ち着いていますが、先ほど少し触れましたように、例年よりもショパンをメインにした演奏会が多く、ポスターをよく目にします。夏には音楽祭もありますし、何といっても今年は第16回ショパンコンクールが開催されますから、これからまたもっとにぎやかになると思います。


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▲ショパン博物館とショパン・センター
ショパン博物館の向かいに建っているのは、ショパン・センターです。ここにポーランド国立フリデリク・ショパン研究所などショパン関係の諸団体が入っています。


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▲ショパン博物館


◆観光客の方は?


生誕記念コンサートの頃は観光客が多かったと思いますが、今は普段とあまり変わらないような気がします。ですが、これから大きなイベントがある時を中心にたくさんの方が来られるのではないでしょうか。


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▲ワジェンキ公園 ショパン像


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▲ワジェンキ公園 ショパン・コンサートのポスター
5月半ばから9月末まで日曜日にショパン像のもとでコンサートがあります。公園の入り口に出ているコンサートのポスターです。


◆ショパンのゆかりの地


特におすすめしたいのは、やはり新しくなったショパン博物館です。
外観はほとんど同じですが、内部は全く違います。最新技術を利用したマルチメディア博物館になりました。展示スペースもこれまでより多くなりました。来館者は博物館の外にあるチケット・オフィスでカードを借ります。これを展示物の前の印がついているところに近づけると、説明や音楽を聞いたり、画像を見たりすることができます。説明は、ゆくゆくは8ヶ国語の中から選べるようになりますが、その中に日本語もあります。ただし、今のところ、まだ日本語は利用できません。画面はタッチパネルになっていて、触れると画面が変わりします。例えば、ショパンの晩年の手帳が展示されているそばの画面にこの手帳が映し出され、手帳の画像をクリックすると頁がめくれます。次の頁の画像になるのです。展示室は「ピアニスト」「作曲家」「ワルシャワ時代」などテーマ別になっていますが、2階の「パリのサロン」にはショパンがパリで最後に住んだヴァンドーム広場の部屋を再現した一角があります。その住居で実際にショパンが使っていたプレイエル社のピアノも置かれています。さらにこの展示室にはフランス語で会話している声や咳の音などが流れ、ショパンが好んだすみれの花の香りに満たされています。まさにショパンの部屋の雰囲気が味わえるのです。この博物館は3月1日に開館記念式典が行われた後、しばらくは招待客だけしか見学できませんでしたが、4月6日から一般公開されました。ゆっくり見学できるようにと、一度に100人までしか入れません。そのため、博物館では予約を受け付けています。今のところ大変な人気で、かなり予約が埋まっているそうです。ただ予約状況は日によって違いますし、予約を入れてもキャンセルする方もいらっしゃいますから、予約なしで絶対に入れないとは言い切れないようです。ただ予約を入れておいたほうが確実だそうです。博物館のサイトから予約を入れることもできますが、その際にはログインする必要があります。開館日は火曜日から日曜日で、12時から夜8時までです。火曜日は入場無料ですが、予約を入れることはできないことになっています。ただ入場者数が限られていますから、チケット・オフィスで何時に入れるか確認しなければなりません。


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▲ショパン博物館とチケット・オフィス
階段を上ったところに博物館の入り口があります(ドアの左右にランプがついています)。写真の右手に見えるガラスのドアがあるところがチケット・オフィスです。


ショパン博物館から徒歩で数分の位置にクラコフスキェ・プシェドミェシチェ通りがあります。旧市街に続く通りですが、まさにここにショパンゆかりの場所がたくさんあるので、是非散策していただきたいです。いくつかご紹介したいと思います。旧市街に向かって少し歩くと、すぐ左手に教会が見えます。この教会が聖十字架教会です。祭壇に向かって左側の柱にショパンの心臓が納められています。


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▲クラコフスキェ・プシェドミェシチェ通りと聖十字架教会
左手に見えるのが聖十字架教会です。ここにショパンの心臓が納められています。


聖十字架教会より少し先の右手に、ワルシャワ大学があります。正門を入って奥に進むとカジミェシュ宮という学長室などがある建物がありますが、そのカジミェシュ宮の手前の建物に、ショパンは1817年から1827年まで住んでいました。カジミェシュ宮側に記念プレートがあります。この建物には現在日本語学科も入っています。ところで、ショパンが学んだ「高等音楽学校」は、ワルシャワ大学の一部でした。ショパンはワルシャワ大学の学生だったわけです。今年2月、そのことを記念してカジミェシュ宮に設置されたプレートが除幕されました。カジミェシュ宮の裏は現在公園になっていますが、ここにはショパンの時代小さな植物園があり、ショパンのお気に入りの場所でした。


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▲カジミェシュ宮 記念プレート
カジミェシュ宮の1階に設置された記念プレート。ショパンは1826年から1829年まで王立ワルシャワ大学高等音楽学校の学生であったと彫られています。


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▲ワルシャワ大学旧図書館
旧図書館で「ワルシャワ大学のショパンの足跡をたどって」という展覧会が11月20日まで開かれています。


ワルシャワ大学の左隣にある教会は、ヴィジトキ教会です。当時、日曜日にここで中等学校の生徒や大学生のためのミサが行われていましたが、ショパンは中等学校時代にオルガンを弾いています。そして、そのショパンが演奏したオルガンがこの教会に残っているのです。


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▲ヴィジトキ教会
ショパンが弾いたオルガンが残っています。


ワルシャワ大学の向かい側には、現在は美術大学になっているチャプスキ/クラシンスキ宮があります。門を入って、すぐ左手の建物の3階に「ショパン家のサロン」という小さな博物館があります。ショパンはここに1827年からワルシャワを去るまでの3年間住んでいました。ショパンの友人であったアントニ・コルベルクが描いた絵を基にショパン家のサロンが再現されています。


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▲ワルシャワ大学 ショパンの家
カジミェシュ宮の手前(旧図書館の右側)にある建物。ショパンはここに1817年から1827年まで住んでいました。現在、ここには日本語学科があります。


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▲ショパン家のサロン
左側の部分の3階に「ショパン家のサロン」があります。ショパンはワルシャワ時代の最後の3年間(1827~1830年)、ここに住んでいました。


クラコフスキェ・プシェドミェシチェ通りには、この他にもまだまだショパンゆかりの場所があります。先日、大統領夫妻の死を悼んで多くの人がろうそくを捧げに訪れた大統領府のラジヴィウ宮も実はそのひとつです。1818年2月24日にショパンはここで初めて公開演奏を行いました。アーダルベルト・ギーロヴェッツの協奏曲を演奏しています。


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▲ラジヴィウ宮
現在は大統領府があるラジヴィウ宮。4月の大統領機墜落事故に関する写真を見ている人々が見えます。今でも半旗が上がっています。ここで1818年2月24日、(3月1日誕生日説をとれば)まもなく8歳になるショパンが初めて公開演奏をしました。


最近までショパンゆかりの場所には記念プレートすらないところも多かったのですが、昨年石で作られたベンチがワルシャワの14箇所に設置されました。英語とポーランド語でその場所についての説明が書かれています。しかし、それだけではありません。ボタンがついていて、これを押すとショパンの音楽が流れるのです。


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▲ベンチ
ヴェッセル宮の説明が書かれたベンチ


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▲ヴェッセル宮とベンチ
ショパンの時代、ここには郵便局がありました。また、ここから馬車も出ていました。1830年11月2日、ショパンはここから馬車に乗って、ワルシャワを後にし、二度と祖国に戻ることはありませんでした。手前に昨年設置された黒いベンチが見えます。ここにヴェッセル宮の説明がポーランド語と英語で書かれ、ショパンの音楽が流れるボタンがついています。


ワルシャワから54キロの地点にショパンの生家があるジェラゾヴァ・ヴォラがあります。こちらも再整備され、ごく最近オープンしました。門のそばに新しい建物が2つでき、1つにはチケット・オフィスや売店など、もう1つにはレストランやコンサート用のスペースなどがあります。生家の内部も新しくなりました。ショパンが生まれた家の空間や雰囲気を、訪れる人それぞれが存分に味わえるように、展示物を控えめにしたそうです。ジェラゾヴァ・ヴォラにはいくつか行き方がありますが、ワルシャワのショパン博物館から出ているバスを利用すると便利かもしれません。


◆これからでも見られるショパンのイベント


ポーランド国立フリデリク・ショパン研究所は、毎年夏に国際音楽祭「ショパンとそのヨーロッパ」を開催してきました。例年は8月半ばから半月の期間ですが、今年はショパン・イヤーということで、8月1日から9月3日まで開かれます。この音楽祭では、ショパンの作品の他、同時代の作曲家の作品、ショパンにインスピレーションを与えたと思われる音楽などを中心に様々な作品が、優れた演奏家によって演奏されます。例えば、8月6日には、ベッリーニのオペラ《ノルマ》がコンサート形式で演奏されますが、ファビオ・ビオンディ指揮エウローパ・ガランテによる当時の楽器を使用した演奏です。ショパンはオペラを全く作曲しませんでしたが、オペラを非常に好み、その影響は彼のピアノ作品によく見られます。ショパンはベッリーニとは個人的にもパリで知り合い、1835年にベッリーニが亡くなるまで良き友人でした。また、日本からは今年はピアニストの海老彰子さんが招待されており8月4日にリサイタルが予定されています。この音楽祭のプログラムは、研究所のサイトに掲載されています。

10月には第16回ショパンコンクールがあります。4月12日から30日までワルシャワで予備審査が行われ、81名のピアニストが通過しました。そのうち日本の方は17名です。第1次予選は10月3日からですが、それに先だって1日には内田光子さんのリサイタル、2日には審査員であるマルタ・アルゲリッチとネルソン・フレイレが出演する演奏会が開かれます。第1次予選は10月3日から7日まで、第2次予選は9日から13日まで、第3次予選は14日から16日までです。そして、本選は18日から20日までで、20日の現地時間で夜の11時頃結果が発表されることになっています。21日から23日まで、受賞者の演奏会があります。今回、審査員団に日本からは小山実稚恵さんが加わっていらっしゃいます。


ショパンコンクール期間中の10月17日は、ショパンの命日です。ショパンの心臓が納められている聖十字架教会で、モーツァルトのレクイエムがミサ形式で演奏されます。フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮シャンゼリゼ管弦楽団による演奏です。


◆ポーランドに行った時、会話に花が咲く“役に立つ一言”


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▲ワルシャワ中央
ワルシャワの中心です。一番高い建物はソ連から贈られた文化科学宮殿。その向こうに比較的新しいビルや建築中の建物が見えます。


★Miłego dnia.
(良い一日を)ミウェゴ・ドニャと読みます。
★Kocham Chopina.
(ショパンが好きです[逐語訳ですと「ショパンを愛しています」]コハム・ショペナと読みます。ショパンの好きな方で、今年ポーランドを訪れる方に是非使っていただきたいです。こちらでは「日本人はショパンが好き」とよく言われています。でも、ポーランド語で言ったら、びっくりされると思います。
★Bardzo mi się podoba
(とても気に入りました)で、バルゾ・ミ・シェン・ポドバと読みます。こちらはもっと使える場面が多いと思います。コンサートや見学した場所が「よかった!」という場合や贈り物をいただいてとても気に入ったという気持ちを伝えたい時など、様々な場面で使えます。