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1月7日(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポーター、佐藤めぐみさんからの報告です!

Happy New Year from NYC!!

今日のニューヨークはちょっぴり暖かい。。。と思ったら最高気温が0度でした。
このところずっとマイナスの極寒の世界だったんです。

ニューヨークのお正月ってどんなふう?と思うかもしれませんが、
ニューイヤーズイブに飲めや歌えやの大騒ぎをしたあと、
1日は休んですぐ仕事モードです。
クリスマスであれだけ盛り上がってしまったので。
お正月は意外と地味なんですよ。
クリスマスが日本のお正月の感覚かも?

ともあれ世界共通で新年。
今日は新年にふさわしいゲストのインタビューです。

こんなキーワード聞いたことがありますか?「ポストグローバル」
すっかりグローバル化した今の世界の、その後、という意味ですが、
このコトバの生みの親は、元ニューヨーカー、ALEXANDER GELMAN

ゲルマンさんの肩書きはスーパーデザイナー。
90年代にはニューヨークの広告業界のスーパースターでした。
誰でも知っているMTVのロゴは彼の代表作の一つ。
MOMAニューヨーク近代美術館の
「最も影響力のあるアーティストの一人」として殿堂入りも果たしました。

ところが30代後半、キャリアの頂点に立ちながら、それをすべてなげうって、
行ってしまいました。
どこへ? 日本へ!

しかも彼がたずねたのは、東京ではなく、さまざまな地方の伝統工芸の職人さんたち。
そこで彼が発見したのが、ポストグローバルの世界では、
「日本の地方文化」にこそ、これからの世界が学ぶべき事がたくさんある、
ということなんです。

このゲルマンさん、
80年代のアメリカで、日本の電化製品のコンセプトやデザインにふれたのが、
日本に興味を持つようになったきっかけだったそうです。
90年代には日本のクライアントのブランディングも手掛けるようになり、
何度も行き来した後、日本に拠点を作ることに決めました。

いったい何が彼をそうさせたんでしょう?

「企業のための大きな仕事を、次から次へすごいスピードで手掛けているうちに、
もっと時間をかけて、意味のあるものを作りたい、と思うようになった。
日本の伝統芸術は、作るのにとても時間がかかる。
漆塗りにしても乾かすだけで6ヶ月もかかるんだ。
その技術は何世代にもわたって受け継がれてきたもの。
数は少なくでも、時間をかけてじっくり作るものこそ、
意味があるものだと感じた。」
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日本で最初についた仕事は、
雑誌「家庭画報」の英語版のエグゼクティブ・エディター。
日本の伝統文化をハイエンドな読者に紹介するこの雑誌で、
日本各地の伝統芸術や工芸にふれているうちに、
もっと深く知りたくなり、プロジェクトを始めることにします。

その一つが、漆塗りの職人さんといっしょに作った、チェスセット

「漆塗りに興味を持ち、石川県の山中塗りの工房に行って、
いっしょに作らせてもらう事にしたんだ。
何を作ろうか考えた時、茶碗ひとつにしても既に何百年もかけて完成された形で、
これ以上自分がどう変えられるものでもない、と感じました。
だからちょっと自分自身の文化である西洋、チェスを持ち込む事にした。
お互いに新しいものへの挑戦で、9ヶ月もかかったけれど、
とても満足のいくモノができたと思う。」

このチェスセットの写真、ゲルマンさんの本、POSTGLOBALでも見る事ができます。
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その「ポストグローバル」ですが、ゲルマンさんはこんな意味で使っています。

「世界がグローバル化した今、弊害に気づいて、その逆に向かう動きもある。
たとえば2003年にニューヨークで起きた大停電は、
たった一カ所の故障が原因だった。だから今では多くの建物が自家発電機能を
備えるようになってきた。
近郊農業が再び盛んになってきているのも同じだと思う。
そういう動きを「ポストグローバル」と呼ぶ事にしたんだ。」
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そしてゲルマンさんは、ポストグローバルで世界で学ぶべき事が、
世界中どこでもない、日本の「地方」にある、と言うんです。

そんな日本の地方に受け継がれている漆塗りやガラス工芸などの伝統工芸、
能や人形浄瑠璃、茶道や剣道など、日本の伝統の芸術文化に幅広く、
しかも深くふれ、コラボレーションする毎日を追った本が、
「ポストグローバル」

そしてゲルマンさんは、ポストグローバルの世界では日本の地方文化から
学べる事がたくさんあると言います。

「ポストグローバルの時代は世界中で地方文化が注目されるでしょう。
中でも日本の地方文化が大切なのは、
こうした伝統が、きちんと残されているだけでなく、
現代的なものと同居しながら、
その地方の顔として、生活や経済にちゃんと貢献している事です。
これは世界でもユニークな例だと思うんです。」
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私もゲルマンさんの話しをきいて、なるほどなー、と思いましたが、
日本って伝統とのおつきあい、結構うまくやってたんですね。
こんなふうに住んでいると当たり前すぎて気づかない事も、
外から見るとすごく面白かったり、楽しくなったりしますよね。

たとえば東京みたいなすごいハイテク都市なのに、
高層ビルの影に小さなお稲荷さんがあったり、
クリスマスツリーだったかと思うと、次の日は門松になって
昨日はコスプレだった女子が今日は着物を着てたりして、
外国から見た日本人って、2百年くらいのタイムスパンを
自由自在に行ったり来たりしているようなユニークな人たちなんです。

そんな文化を日本人ももっと楽しんだ方がいいし、
世界に役立てるにはどうすればいいのか、考えてみるのも、
これからの日本人のポストグローバルな生き方かもしれませんね。

最後になりましたが、これは去年の終わりに紀伊国屋ブックストアでの
公開インタビューを編集したものです。
ゲルマンさん、ゆっくりと言葉を選びながら語る、素敵な人でした。
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佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers