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10月22日(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポーター、佐藤めぐみさんからの報告です!

NYはインディアンサマー、

そして、ニューヨークの秋は忙しい季節でもあります。

特に今年はヤンキース盛り上がって来ています。 

ニューヨーカーに人気ナンバーワンの美術館といえば、グッゲンハイム美術館、
今日で50周年、1日入場料がタダになり、長い列ができました。

来週はもうハロウィーン、翌日はニューヨークシティマラソン。。。

そして、日本でも公開されたアニメ映画、「ASTRO BOY」
見た人いらっしゃいますか?

もちろん手塚治虫の「鉄腕アトム」が原作、
しかしれっきとしたハリウッド映画です。
そして、正確にはアニメではなく、CGコンピューターグラフィックス
Astro_poster.jpg


どうもあのアトムの顔が。。。という日本人の方、多いようですね。
日本でも報道されたと思いますが、
デビッド・バワーズ監督によれば、映画版アストロボーイは、原作より年上、
13歳くらいの思春期の少年という設定。
だから大人っぽい顔になった、というわけ。
日本じゃ13歳はまだ幼い感じですが、
アメリカの13歳はかなり大人びてますからね!

でも日本人には、アメリカ人が握ったお寿司を食べるような感じで、
どうもしっくり来ない、と私も思っていました。
でも、食べてみて、カリフォルニアロールも意外とおいしいじゃん、
と感じたように、ハリウッドアトム、私は好きでした。

実はこの「ASTRO BOY」アメリカではこの週末が公開日。
でも先週末、ニューヨークの子供達を集めた特別上映会に参加できたので、
その模様を中心にレポートします。

全米公開の1週間前、NYのインディー映画館、
IFCセンターで、子供達を集めてハリウッド版「鉄腕アトム」
「ASTRO BOY」のスクリーニングが行われました。

映画を見た後の子供達に感想を聞いてみました。

「最後のシーンで自分よりずっと大きなロボットを
やっつける時が、最高だった!」という5歳の男の子と、
「戦いのシーンがかっこいい」という14歳の男の子。
やっぱりボーイズは戦いが好きなんですよね。

かと思えば、アストロボーイのマンガを図書館で借りて読んだという11歳の女の子は、「アストロボーイはとてもリアルだけれど実は人間ではないロボットというところが、
リアルではない、そこが面白いと思った。」と大人びたコメント。
また、「パパが子供の頃からアストロボーイの大ファンで、
映画が公開されるのをとても楽しみにして来た、という家族連れもいました。

そう、実は今40代、50代のニューヨーカーにとっては、
アストロボーイはとても懐かしいアニメなんです。
1960年代に、日本とほとんど同時に、
アメリカのテレビでも放映されていました。

でも当時は見ている誰も、それが日本のアニメだということを知らなかったそうです。
日本的な風景などは、あえてカットして放送していたからなんですね。
もちろん主題歌も、おなじみのあの曲が英語で吹き替えられています。

ところで話しは変わりますが、
この公開に先立って、ニューヨークの日本文化発信拠点、
おなじみ紀伊国屋ブックストアでは、TEZUKA-DAYというイベントが行われました。

アトムの60年代のオリジナルアニメのスクリーニングもあって、
若いアニメファンが真剣に見ていました。

今ではアストロボーイがFROM JAPAN というのは多くの人が知っていますが、
それに比べて、OSAMU TEZUKAという名前はまだあまり知られていません。
MIYAZAKIという名前がアニメファンはもちろん、
一般のアメリカ人にも少しずつ浸透しているのに比べると、
TEZUKAはまだまだなんですね。
Tezukafans.jpg


その理由を、手塚マンガの英語翻訳版、ブッダ、
ブラックジャック、きりひと讃歌などを出版している出版者、
VERTICALのディレクター、ヤニー・メンザスさんに聞いてみました。
ギリシャ人のヤニーさんはちょっと関西弁の日本語を流暢にしゃべるニューヨーカーです。
Director.jpg

Yanni.jpg

「今アメリカでマンガがはやっているというのは確かなんですけど、
どちらかというとナルトとかティーンエイジャー向けのものが
流行っているという事なんです。手塚さんの作品はどちらかというと、
大学生かそれ以上の方々の間で評価されていますね。
たとえば僕たちが出しているような、70年代の手塚作品ですと、
両義性みたいなものが組み込まれていて、
それがアメリカンコミックスとは違う。
アメリカのマンガはスーパーマン、バットマン。。。
とみんな正義のヒーロー。。。というのが違うという事です。
例えばブラックジャックというのは、
アメリカのマンガではとても善玉には見えない行動を取ったりするんです。
例えば一つのエピソードで、彼が恨みを抱くお医者さんの息子が、
ブラックジャックの手術が必要になる。普通の少年漫画だと
(ブラックジャックは「少年チャンピオン連載」)その子供を直すわけですよ。
子供は悪くないんですから。
でもそのお父さんが「手術してくれたらお前の免許をとってやる」と渡した紙を、
最後ビリっと破って終わるわけです。
これはドラゴンボール的な世界では考えられないですよね。
彼が主人公なわけですから。」

確かにブラックジャックはもちろん、手塚作品は、
本当に大人が読んで読み応えがあるものが多いですよね。

でもアメリカでは、アニメやマンガはまだまだ子供のもの、
善は必ず悪に打ち勝つ、というようなストーリーの単純さもあって、
大人は敬遠する傾向にあります。

そんな中で、日本のアニメやマンガの持つ深いメッセージや、
善悪をハッキリ分けることをあえてしないリアルさが、
アメリカの大人たちを、少しずつ巻き込もうとしているんです。

たとえばハリウッドのアニメーションを作る時には、
「いっしょに見に行く親が寝ない程度の内容」にするそうなんです。
でも、「アストロボーイ」は明らかに違っていました。

たとえばこのお父さんはこうコメントしてくれました。

「この映画のテーマに衝撃を受けた。
私達が何者かを決めるのは、私達の持つ記憶なのか、そうではないのか、という
とても哲学的な疑問を投げかけているのが、素晴らしいと思った。」

ニューヨークの新聞「ニューズデー」の映画評では、

「この作品には、数々の“問題提起がある。
アニメが子供向けと思っていたみなさんは、うれしい驚きを感じるだろう」

とこれまでのハリウッドアニメーションとは一線を画すものであると宣言。

ハリウッド版「アストロボーイ」
日本人にとってはカリフォルニアロールかもしれませんが、
日本のアニメのスピリットはちゃんと受け継いでいるんです。

言葉を変えると、
これが外国人から見た、日本のマンガやアニメの姿なのかもしれません。

文化っていうのは、伝わって行く場所の文化や習慣とまじりあって、
変貌していくものなんですよね。


佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminy