2009年12月12・13日 「日本の外交について/冬のおすすめのスポット」

<ザ・ジャーナル〜日本の外交について>

暁 >  「ザ・ジャーナル」のコーナーです。今回のテーマは「日本の外交について」です。

高野>  少し前になりますが、アメリカ大統領のバラク・オバマが日本を訪問しました。直前に国内で事件があったために来日の日数の2日が1日となってしまいました。しかも、東南アジアにおいて国際会議があったためオバマさんが日本にまだ滞在していた時、先に鳩山さんは日本を発ち、非常に慌ただしい日米首脳会談となりました。
 私は今回の会談は全体としてはなかなかよかったと思っています。とくに、一つの問題としてはアフガニスタンの戦争に絡んで日本がいままで海上自衛隊をインド洋に進出させて給油活動に従事していた事に対して、民主党は始めから止めると言っています。それを言いだした時には新聞も自民党も「そんな事を言ってどうするのだ。アメリカが怒るぞ」と大変な事になると言われていました。政権発足から1カ月余りの時に、その問題はろくに議題にもあがっていなくて、日本の止めるという方針の法案を呑んでしまうという事が起きました。実は、これは今回の日米首脳会談の大きな成果なのです。つまり、文句を言わせないで日本の言い分を通したからです。

暁 >  そこのところはあまり話題にならなかったですね。

高野>  新聞は「こんな事を言ったらアメリカを怒らせてしまって大変だ」と言っていたにもかかわらず、法案が通ったら沈黙をしているために国民は気がついていないのです。
 一方では普天間の基地移転問題もあって両者はまだ対立したままですが、新聞は、今度はそちらの方を思い切りクローズアップして「アメリカを怒らせたらどうするのだ」とまた同じ事を言っているのです。
 普天間の問題もなかなか簡単な問題ではありませんが、私は鳩山さんの「県外」と始めから言ってきた線でジリジリと押し相撲をやっていく事がよいと思います。つまり、慌てて結論を出す問題ではないという事です。

暁 >  アメリカ側は普天間について何か言ってきているのですか?

高野>  普天間は既得権益のようなものになっているのです。つまり、戦後ずっと長い間、あの場所にアメリカの海兵隊がいて、何十年も日本が基地の維持のために思いやり予算によってお金を出しているわけですから、出ていきたくないのは当り前という事です。しかし、本当の事を言うと、アメリカは全部グアムに移転しても全く問題はないのです。アメリカの中ではこのような意見も少なからずあります。
 普天間には、およそ13,000人から14,000人くらいの海兵隊が駐在しているのですが、その内の8,000人はグアムに移る事に決っていて、この移転の費用も日本が出す事になっています。更には移転先の将校用の住宅のお金まで日本が出す事になっているのですが、これはおかしい事だと思います。結局、5,000人くらいが残るのですが、これは非常にコンパクトな特殊作戦等ができるプロフェッショナルな部隊で、これがまだ日本に居続けるので普天間の替わりのヘリポートと岩国にある戦闘機と、佐世保にあるヘリ空母等の軍艦と沖縄との3点確保によって運用していく事が必要だというのです。しかし、全てが離れているために不便だと思います。もしグアム1か所に全ての部隊がいるのであればパッと飛び乗っていけるわけですね。
 沖縄に関して石破前防衛長官がよくおっしゃっていたのは「前方配置は必要だ」という事です。つまり、作戦領域に近いところにいれば海兵隊がサッと飛び出していくことができるからです。そうなると、その戦場というのは何処なのだという疑問がありますが、かつては、もしも朝鮮半島で大規模戦闘が起った時に基地が沖縄にあればすぐに行くことができる事が主な理由だったのです。現在海兵隊は、アフガンやイラク等に行ったりしているわけで、グアムにいたほうがむしろ近いわけです。しかも、今後朝鮮半島で大規模な戦争が起きる可能性はほとんどゼロです。アメリカと北朝鮮の二国間交渉は12月に始まります。そうすると、前方配置と言いますが、それは朝鮮半島に対しての前方配置になるので必ずしも沖縄にいる必要はありません。仮に朝鮮半島で何かが起ったとしても、グアムにいて、全部まとまって一瞬のうちに乗り込んで出ていったほうがよいはずなのです。

暁 >  グアムと沖縄ではたいして距離が変わらないわけですよね。

高野>  離れているためにわざわざ佐世保から軍艦が降りてこなければならないという状況になります。したがって、日本は無理にそのように分ける事はしないで全部グアムに集結したほうが便利だという事を言ったほうがよいわけです。

暁 >  アメリカ側はその交渉や普天間等の事に関してどのように思っているのでしょうか? 実際にマスコミは色々と言っていますが、高野さんは実のところ、どのように思っていらっしゃいますか?

高野>  官僚レベルでいままで10数年に渡って積み上げてきて、日米合意によって普天間を辺野古に移して海上につくるという事を、協定文まで交わして合意ができているわけですからその通りに実行しろと言うのです。

暁 >  国内においては鳩山さん以下、民主党の方々もグアムに移っていただきたいという事なのでしょうか。

高野>  すぐに「はい、そうですか」とはいかないと思いますが、その問題をぶつけて一定期間、つまり、いまから辺野古に基地をつくり始めるとすると、10年くらいかかるわけですから、基地ができあがった時に米軍の戦略が変わったのでグアムに移るという話になりかねないわけです。もしそうなるとお金も無駄になり、ジュゴンと珊瑚の海を潰す事になってしまいます。
そこまで考えると将来の撤退という事を含みつつ、とりあえずいま、臨時の非常に簡単なやり方によって施設をみつけておくという交渉が成り立つ可能性があると思います。

暁 >  交渉の途中という事ですね。オバマ大統領は韓国や中国にも行かれましたね。

高野>  防衛問題に関しては韓国のほうがよっぽどしっかりとしています。李明博大統領が「韓米同盟未来ビジョン」を提示しました。これは簡単に言うと、在韓米軍が全部引きあげるという事を想定して、その先の米韓の軍事協力についてキチンと考えを述べるという事です。つまり、韓国には大きな陸軍師団が朝鮮戦争以来ずっといるのですが、それももう必要ないと言って、将来に向けて撤退させるという前提が、米韓同盟の未来の姿であるという事を議題にしているのです。

暁 >  日本と逆ですね。

高野>  日本は対等外交と言っているのですからこれくらいの事を提起しなければならないと思います。

暁 >  そのような関係で韓国と日本、中国と日本の関係等はアメリカを含めてどのようになっていくのか、或いは、どのようになっていくべきなのでしょうか。

高野>  鳩山政権は東アジア共同体と言っていて、これは何が東アジアなのかというと、北のほうでは日本、韓国、中国です。そして、南のほうは東南アジアのASEAN10カ国で既に一つの共同体=連合をつくっています。それに日本、韓国、中国という北東アジアの3カ国が加わって東アジア共同体をつくっていこうという方向です。この背景には日本と韓国、ASEAN、そして中国という関係が経済面で非常に緊密になり、日本の輸出を考えても、昔はアメリカが断トツでトップでしたが、現在はアメリカが20%くらいでアジア向けの輸出のほうが55%くらいにのぼっています。つまり、アジアとの結びつきのほうが近いという事です。

暁 >  政治的にも中国寄りになっていくのでしょうか。

高野>  中国寄りと言いますか、小泉首相の時代に中国と喧嘩ばかりし過ぎたので、ごく普通の関係に戻すと言ったほうがよいと思いますが、結果的には以前に比べると少し中国寄りであると思われるかもしれません。

暁 >  小泉さんはアメリカと言いますか、大統領と仲が良すぎましたね。

高野>  少し寄り過ぎでしたので、それを真ん中に戻すという事が対米自主外交であり、中国との関係回復となるのだと思います。

暁 >  岡田克也さんもなかなかよい動きをされているとマスコミに言われていますがいかがでしょうか?

高野>  彼は頑固なところは頑固で、慎重なところは慎重でなかなか使い分けが上手だと思います。

暁 >  岡田さんはとても真面目な印象があります。

高野>  印象ではなくて真面目の塊のような人で、私が以前、何かの原稿で「クソ真面目」と書いたことがあるくらいで、それに対して岡田さんから嫌みを言われた事もありました。その時の彼は、真顔で「クソ真面目と書きましたね」と言ったので、私は「褒めたんだよ」と言いました。彼はニコリともしませんでしたが……。

暁 >  それくらいのほうが信用できると思います。

高野>  確かに外務大臣として外国と交渉にあたるにはそれくらいのほうがよいと思いますね。

暁 >  海外の交渉というと鈴木宗男さんがいますが、別のタイプですね。

高野>  あの人は裏のほうから出てきて、「どうも、どうも」と言いながらですから、相手が騙されてしまいますね。
 さて、これからの外交面でつけ加えておく事は、岡田外務大臣が表、鈴木宗男さんが裏で日露外交、つまり、北方領土問題が鳩山さんのおじいさん以来の課題ですので、来年春にかけて日露関係も何か動きが出てくるかもしれません。

暁 >  鳩山さんの御子息がモスクワ大学にいらっしゃるのでロシアとは関係が深いですね。

<高野孟の趣味的万華鏡〜冬のオススメスポット>

暁 >  「趣味的万華鏡」のコーナーです。高野さんはこれまで日本各地を多々訪れている事と思いますが、この冬の時期にお薦めのスポットはありますか?

高野>  冬ですと雪を見ながら温泉に入るのが一番ではないでしょうか。

暁 >  日本酒を飲みながらでしょうか。

高野>  そうですね。北海道の帯広あたりがよいと思います。十勝川という川が流れていて、その川岸に十勝川温泉という温泉街があります。この温泉の冬は最高なのです。「モール温泉」といって、世界で3か所くらいしかないらしいです。普通の温泉は火山性で、火山のマグマの熱によって熱せられたものが噴きだしてくるのですが、このモール温泉は何万年か何億年かの植物が折り重なっていって天然ガスのようなものがそのまま熱を発して上がってくるというものらしいです。色はコーヒーのような色で、感触は少しヌルッとしています。

暁 >  地層の中に温泉があるような感じなのですね。泥温泉のようなものでしょうか。

高野>  植物の繊維だというのです。それが少し茶色で浮いているというか、混じっているような感じなのです。物凄く体が温まります。

暁 >  そこだけではなくて一帯全てがそのようになっていて、その中に少し穴をあけただけなのですね。凄い地場というか温まりかたが普通の温泉とは違いそうですね。

高野>  十勝川は市の中心からは少し離れていますが、帯広駅前のビジネスホテル等もモール温泉を出して大浴場をつくってありますよ。

暁 >  まるでパワースポットのようですね。

高野>  この温泉に入っていると、不思議に地球の恵みを頂いているような感じになります。

暁 >  景色もとてもよさそうですね。

高野>  帯広の景色はまるで日本ではないような感じで、地平線は雪で真っ白です。帯広、北海道の冬景色は日本離れしていて、日本のいわゆる山が迫っているような風景とは違って、緩やかな大陸の景色でヨーロッパ的な雰囲気です。雪の質は温度が低いためにサラサラとしていて、玄関前に積もった雪を雪かきではなくて、ほうきで掃いています。スキーをやる人も本土のベタベタした雪とは違う北海道のサラサラな雪を楽しむのです。

暁 >  なるほど。寒いところが苦手な人にはこの冬はどこがお薦めですか?

高野>  南へ行かないとならないでしょうね。沖縄に今の時期にいくのはよいと思います。そのままもっと先に行くのであればバリ島もよいと思います。

暁 >  バリ島はリゾートという感じですね。先日、地震があってから復興したのでしょうか。

高野>  地震もありましたがテロもありました。しかし、観光客はあまり減っていないようです。バリは人情も温かいです。

暁 >  私はバリで高野さんがエステをするのではないのかなぁと一瞬頭の中で思い描いてしまいました。

高野>  マッサージくらいはうけますが、酒ばかりを飲んでいますね(笑)。