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金田一秀穂のことばの歳時記
 
うるおぼえか?うろおぼえか?
答えは、うろおぼえ
「うろ」は木の幹に開いた穴など、空間のこと。
うつろというのは中身がかっらぽであること。
中身のあいたような、ぼんやりした記憶なので「うろ覚え」と言ったということです。なお古くは「おろ覚え」とも言い、同じ意味を持っています。

まったり
辞書には「穏やかで口当たりがよく、こくがある味わい」と載っています。
いかにもグルメの本に出て来そうな、京風懐石のエビシンジョの椀ものなどの形容に使われそうな言葉ですが……。
ある説によると、京都では本来「まったりとしたお湯」などと使うのが本当で、料理や味などに使われなかったようです。
もともと「まったり」は、ゆるやかで穏やかな気分を表す言葉だったのかもしれません。最近の若者が使う「まったりと時間を過ごす」というのは、ひょっとすると、大変正しい本来的な使い方であるのかもしれません。

お疲れ様
毎日の仕事が終わった後に言い合う言葉。
さようならを言うほどの別れでもない時に、この言葉は有効ですね。
シフト制で交代するときに、終わって帰る人はともかく。それでは着たばかりの人はなんと言ったらいいものでしょうか?
たぶん時間に関係なく、「おはようございます」が一般的と言えそうです。
「おはようございます」は仕事を始めるときの挨拶で、朝の挨拶だけではないというのが、今の日本語の使われ方のようです。



<金田一秀穂>
杏林大学外国語学部教授。1953(昭和28年)東京生まれ。祖父・京助、父・春彦に続いて日本語の研究を専門とする。上智大学心理学科卒業。東京外国語大学大学院日本語学専攻修了。中国・大連外語学院、米・イェール大学、コロンビア大学で日本語を教える。94年ハーバード大学客員研究員。著書に『新しい日本語の予習法』(角川oneテーマ新書)など。
 
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