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VOLUME 02

目下の夢は沖縄にゴールデン街を作ること・・・『噂の真相』元編集長に休刊の“真相”を聞いた 岡留安則(『噂の真相』元編集長) 聞き手 花田紀凱(『週刊編集会議』編集長)、中田美香(JFNパーソナリティ)(2004.4.12収録)

 
月刊誌『噂の真相』が惜しまれつつ休刊に…
そこで、サングラスの似合う男。ペ・ヨンジュン…い、いや、『噂真』元編集長こと岡留安則氏を急遽ブッキング。真意のほどを聞いてみた。
雑誌休刊の真相は…?岡留編集長の行末の真相は…?いかに!

『噂真』休刊。今のお気持ちを…。
中田 「トレードマークのサングラス。今日もなさってますけど、原稿書く時もつけてらっしゃるんですか?」
岡留 「自宅で書くときははずしますが、会社に居る時はやはり不意な客があったりするから、素顔を見せないという断固とした決意表明ということで・・・」
花田 「何で見せないの?本田勝一と一緒じゃない?」
中田 「岡留さんの素顔を見たっていう方は?」
岡留 「付き合っている女性ですね」
花田 「サングラスは何なの、それは?・・・ブランドは?」
岡留 「これは、バーバリィです」
花田 「何で、素顔を見られるとまずいんですか?」
岡留 「いや別に良いんですけど。ここまできたら徹底して素顔を見せないと。かつて野坂昭如さんとか、野末陳平さんとかサングラスしていたのが、ある日お茶の間ブラウン管の前ではずしたでしょ。それがかっこ悪かったなぁと思って。あのまねだけはしたくないと思って。これ都合いいんですよ。おしのびの時にははずしていれば、分からないから(笑)」
中田 「『噂の真相』休刊から1ヶ月」
花田 「生活は変わりましたか?」
岡留 「こういう取材が続いているし、ほとんど変わらないですね」
花田 「午後に会社に出てきて、夜はゴールデン街に行くと」
岡留 「そうですね。ほとんど同じで、昨日も朝7時までゴールデン街にいて」
花田 「そんなに何してるんですか?いまさらネタ集め?」
岡留 「いやーこれがまたネタが入るんですね。休刊になったら。今まで僕が話し合ってきた人たちはセレクトしてしゃべってたんですね。だから肝心なことしゃべってくれなかったんですね」
中田 「それは休刊になって逆に分かった真相ですね?」
岡留 「新発見でしたね。エクストラ版でも作ろうかと、ひそかに考えているんですよ。仕返ししてやろうかと思って(笑)」
中田 「逆に休刊後の方が忙しいんじゃないですか?」
岡留 「まあ6月か7月かに沖縄に行ったら、完全にリタイアになると思いますね。今までの25年間、新聞夕刊は7誌から8誌、週刊誌・月刊誌も全誌読んでるんですよね。そういう生活が嫌になったというところもあるんですよね。新聞読んでいても切り抜いたりして、習慣って恐ろしいですよね」
花田 「ちょーだいよ、その切り抜き。岡留スクラップでも作るから(笑)」
   
『噂真』休刊。思い出・印象に残っていることといえば…。
中田 「25年、色々多あったんじゃないかと思うんですが・・・」
花田 「裁判って結局何件あったの?」
岡留 「大体数えてみたら40件と、そんなに多くはないんですよね。まあ大きい雑誌ではないですから、スタッフが13件くらい抱えた時期もあったんですよね」
花田 「岡留さんはすぐ謝って、すぐ和解するって言うのが手だからね」
岡留 「それは鉄則です!というか雑誌を作るっていうのは、前向きでなければ駄目っていう発想なんですよ。トラブルっていうのは雑誌が出てから起こることでしょう。でも僕の中では次の号を作ることに全力投球したいことですから」
中田 「でも雑誌を見る限り、『噂の真相』の編集室って殺伐としている気がしてしまうのですが、女性も多くって」
花田 「そうそう美人が多いんだよ。ふざけてるよね(笑)」
中田 「意外にアットホームで。女性は岡留さんの趣味ですか?」
岡留 「いやいや。公私混同持ち込むと小さな会社ですからおかしくなってしまいますから、僕は女性はキャバクラで求めて、スタッフには仕事を求めるっという、その辺は徹底してるんですよ。僕自身拘束されるのは嫌いですから、だいたい出勤は午後5時くらいですから、他の社員が何やっているかは、あまりよくわからないんですよ。結局自由な会社になってしまうんですよね(笑)。ただ僕の場合、本がきちんと出ればいいんですよ。社内規則もないですし、訓辞したこともないですし、教育した事もないですし・・・」
中田 「じゃあみんな居心地良かったわけですね」
   
『噂真』休刊。編集長の触手が動くネタというと…。
花田 「辞めた(休刊の)原因は、やっぱり裁判とかが理由だったんですか?」
岡留 「ここ4、5年かな、判決がとても厳しくなってきたんですよね。それから政治家が簡単に訴えてくるようになったんですよね。きっかけは前総理大臣の森さん。こちらとしては真実の証明は出来ていると思うんですけれど、裁判上は引き分けになっちゃったんですよね。多分向こうの訴え勝ちということなんでしょうけれども。なんとも裁判所が及び腰になっちゃって」
中田 「でもこれだけの情報がある中で、これだったらっていうネタを扱う扱わないの選択のポリシーというのは何なんですか?」
岡留 「うちの雑誌の場合は、公人か見なし公人か。もっと言えば公的目的公益性があるか。名誉棄損いうのは三つ条件をクリアーすればOKなんですけど。公的目的公益性、なおかつ事実、真実性があれば良い。当初からうちは、前二つの条件をクリアしてればいい、うちの場合は有名人か権力者しか取り上げない。例えば『週刊文春』の田中真紀子の長女という人を、『噂の真相』ではどう捉えるかというと、扱ったとしてもコラム、なおかつイニシャル扱いにすると思うんですね。なぜなら彼女は私人ではないし、かといって公人でもない、その中間のグレイ・ゾーンなわけなんだけれど、名誉棄損で損害賠償を求められた場合、今の裁判では負けちゃうんですよ。そうするとイニシャルで、コラムが無難かと。僕の場合、なるべく派手ネタで、なるべく権力・地位の高い人だと触手が動くと・・・」
花田 「でも(『噂の真相』は)ネタの入り方がすごいよね。文壇系のことは新潮、文春は書けないし、そういうの書けるのは『噂真』だけだったからね」
岡留 「これから文壇のゴシップって、きっと出てこないですよね」
中田 「それも含めて、雑誌の中でのタブーってけっこうあるもんなんですか?」
岡留 「自主規制ですよね。ギリギリにどこまで書けるかっていう」
花田 「でもコラムはすごい充実していましたよね『噂真』は。斉藤美奈子、筒井康隆、田中康夫、アラーキー・・・と、これは岡留さんの人徳ですね」
中田 「筒井さんなんかは、断筆してもまた戻ってきましたからね」
岡留 「勝手に断筆宣言しちゃって、それから4,5年かかったかな。また“やりましょうよ”と口説き続けて書いてくれたんですけどね。でもコラムっていうのは、大事なんですよね、固定読者をつかんでおくためには」
中田 「でもこれでなくなってしまうと、マスコミの人たちは岡留さんの情報が欲しくってしょうがないんじゃないですか?」
岡留 「情報のノウハウ、人脈っていうのはみんな欲しいんでしょうね(笑)」
中田 「今回の事件ももちろん、みんなが危機感を感じているのは、<言論の自由>が規制されてきているのではないかということですよね?」
岡留 「んー。それも『噂の真相』休刊の大きな理由になっていますよね。多分来年から個人情報保護法という法律が施工されると思いますが、これはひどい法律で、公人と私人に等しく、個人情報を守るべきだとという法律だから、一番得するのは公人なんですよ。何かどさくさにまぎれて、公人政治家たちが個人情報は開示しないぞというために作った法律ですから、まあ僕は分かりやすく<政治家スキャンダル報道禁止法>という言い方をしているんですね」
花田 「<個人情報保護法>っていう名前が悪いんですよ」
岡留 「やっぱり官僚って頭良いですよ。<盗聴法案>ていうのを、<通信傍受法案>と言われちゃうと何か違うもののように思えちゃう。それから<住基ネット>というより<国民総背番号制>って言ったほうが分かりやすいじゃないですか。だからメディアは独自の表現をするべきなんですけど、役所が言ったとおりに書くから、あっという間に国民に浸透しないままに通ってしまうですよね」
 
『噂真』休刊。沖縄移住化計画…?そして今後『噂真』は…。
中田 「このあと沖縄に移住されると。今後発したいメッセージはホームページを通してやることになるんですか?」
岡留 「『噂の真相』の残務処理として、裁判があと二つ残っているんですけど、この結果報告だけは読者にすべきだと。だからホームページだけ残して、わたしは沖縄に行っちゃおうと」
中田 「でも『噂の真相』はあくまで休刊なんで、今後復刊なんていうことになったら、今度は花田さんが・・・」
花田 「いやいや僕は駄目なんだ。岡留さんは編集者としての能力、プラス経営者としての能力もあるじゃない。僕は経営者としての能力はないからさ」
中田 「じゃあ経営者は岡留さんが(笑)」
岡留 「そうだよね」
花田 「僕は岡留さんみたいな、乱暴なこと出来ないから。僕は事実の裏を取ったことしか書けませんから(笑)」
中田 「でもそのタブーに挑戦していくっていう、エネルギーの源は何なんですか?」
岡留 「多分花田さんも一緒だと思うんですけど、雑誌作るの好きだし、で、面白がりだしっていう部分ですよ。社会的使命感だけでは出来ないですよ。面白いと思ったら、やっぱりやってみようと。止められない」

<反権力、反権威>という旗をかかげ、時代を見つけめてきた『噂の真相』。その編集長は、なんとも物腰の柔らかな紳士だった。女性に持てるということが何となくわかる気がする。目下、復帰は最低2年はないそうだ。岡留元編集長の夢は沖縄にゴールデン街を作ること。本誌が出来上がっている頃には、沖縄に移り住んでいることだろう。 TOP


<岡留安則>
1947年鹿児島県生まれ。79年<反権力、反権威>を標榜とする月刊誌『噂の眞相』を創刊。以来同誌の編集長兼発行人を務める。同誌は“森首相(当時)買春疑惑“など数多くの独自のスクープを挙げ、多くのコア読者を魅了した。
『噂の真相』WEB:www.uwashin.com/
 
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