時代は岩井俊二! |
鈴木 |
「岩井さんの時代が来たと思っているんですよ。なぜかというと、『アップルシード』という作品が作られて、これは3Dなんですけど、ようするにモーション・キャプチャーを使って人に演技してもらったやつをトゥームシェーダーというのを使って、アニメ(セル画)にかえちゃうんですよね。そうすると、絵を描けない人でもアニメーション作れちゃう」 |
渡辺 |
「岩井監督はアニメを作りたいと思われたことはないのですか?」 |
岩井 |
「ありますよ」 |
鈴木 |
「映画みたいにできるんですよ。岩井さんの映画って全部作ってあるじゃないですか。全てね。だから見ててすぐにわかったな。コンテがあるなって思ったんですよ。だからまあ、岩井さんみたいな人に、本当はやってもらったらどうかなって思ってたんですよ。だから、本当に岩井さんの時代が来たんですよ」 |
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プロデューサー鈴木敏夫、監督庵野秀明、主演岩井俊二! |
岩井 |
「『式日』っていう映画だったんですよね」 |
鈴木 |
「そうなんですよ。庵野秀明監督の『式日』っていう映画。それで主演をやっていただいたんです。こういうのだけ僕は選ぶんですよ」 |
渡辺 |
「キャスティングをされたのは鈴木さんだったんですか?」 |
鈴木 |
「なんか、流れで、そうなったんですよね。その『式日』っていうのがね、庵野秀明がこういうの作りたいんだっていうんで、やろうかっていうことになって、それで主役の男の方はどうするって。設定が監督なんですよ。誰がいいかなって、ぱっと思いついたんですよ。それで、まあおそらく岩井さんだったらやってもらえるんじゃないかって。すごく良かったですよ。岩井さんじゃなかったらあの映画は成立していないんですね。あの、本当にお世辞じゃなくて。本当に有り難うございます」 |
岩井 |
「初めてお礼言ってもらえた(笑)」 |
渡辺 |
「全然抵抗なく、やろうと思われたのですか?」 |
岩井 |
「最初、庵野さんが自分でやられるみたいな話しになっていて、でも、さすがに両方現場を演出しながら、監督の役をやるっていうのは難しいって。俳優っていうのは本当の監督にやってほしいからっていう、まあ要するに、代役というか」 |
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プロデューサー論 |
渡辺 |
「岩井さんからご覧になって、鈴木さんはどういうタイプのプロデューサーなのですか」 |
岩井 |
「そうですね、典型的なプロデューサーではないかもしれない。意外と日本の中で異色なのかもしれない」 |
渡辺 |
「典型的なプロデューサーっていうのは、どういうプロデューサーなのですか」 |
岩井 |
「これから色々出てくる人かもしれない」 |
鈴木 |
「いや、あのね、僕ね、初めてお目にかかった時にね、こういう言い方をされたんですよね。鈴木さん、現場を知っている珍しいプロデューサーだって言われた。それ聞いて僕の方がびっくりしたんですよ。だって、プロデューサーだって知っているじゃないですかって。そしたらね、普通は違うっていうんですよ。何が違うって、まず服装が違うって言われたんですけどね。ちゃんとしたプロデューサーっていうと背広を着て、いい車に乗らなきゃいけないって言われて、ああそっかって」 |
岩井 |
「本当、みんなプロデューサーって、どういう系列でそのポジションに入っていくのか人それぞれだと思うんだけど、鈴木さんの場合はわりと作り手の中から、おそらくパートナー的にプロデューサーになっていったタイプっていうか、普通、プロデューサーっていうのは、なんかもう最初から5つも6つも企画を手玉にとりながらやっていく感じがするんだけど、本当に作り手のサイドの中から、しょうがないか、俺がやるかみたいな感じでなったんじゃないですか?」 |
鈴木 |
「あのね、僕は初めてやったのはね、プロデュース的な仕事をしたのは、『風の谷のナウシカ』ってやつなんですけどね、作り手だと思ったんですよ。で、そういう役割を誰がやるっていった時に適当な人がいないわけですよ。じゃあ、俺がやるしかないのかなっていうね、まあ言ってみたら文化祭のノリですよね。岩井さんのおっしゃるプロデューサーっていうのは、まあ色々なプロデューサーの方がいらっしゃると思うんですけれど、僕の場合はね、一言でいうなら監督の味方ですよね。どういうことかというと、一人の人間が考えたものを、みんながよってたかって作るわけでしょ。そしたら色々な障害があったりするんですよ。あらゆる意味で。現場もそうだし、外もあるし。監督はなにしろ映画を作らなきゃいけないから、それをどうやって払いのけるかってね、ほうきをもって掃除するような仕事ですよ。だから、監督が作ろうとするものがあるでしょ、プロデューサーは何が必要だっていったらね、シナリオを読んでね、どのくらい(お金が)かかるんだろうって、まずね、読まなきゃいけないわけですよ。お金の問題にしても。それがどのくらいの、どういうスタッフが必要なのか。そうするといつも同じスタッフでいいっていうわけではないですよね。傾向が違っていたら。だからいつも同じ様な傾向の映画を作る人の場合はある意味楽なんだけど、毎回ね、新しい表現に挑戦なんかされると困るわけですよ。本当に困るんです。読めないんです。色々あるんですよ、そういうのって。まあ例えばね、映画を興業するっていったら、今大きく言って2社しかないんです。東宝と松竹。日本で映画館は2650あるんですけど、東宝が大体その70%くらいを全部おさえてきたんですよ。で、20年間、東宝の天下が永遠と続いていたんです。ところがここにきて、去年の暮れ、『ラスト・サムライ』とね『ファインディング・ニモ』っていう作品が出てきたでしょ。瞬間風速、松竹の方が85%になっちゃったんですよね。東宝だっていっぱい作品をかかえている。松竹だってかかえている。そうすると東宝の作品はね、15%の中で映画館の手配をしなきゃいけないわけですよね。その状況の中でどうやって映画を上映してもらうか。大変な問題になるわけです。なんとなくわかりました?大変なんですよ、そこら辺。ヒットの秘密ってことになるわけでしょうけどね。『もののけ姫』という映画で宮崎駿が、いっぱいお金を使ったんですけどね、作っている最中に何考えたかっていうと、劇場でちゃんとかけてもらえるかどうかが大事なわけでしょ。だから全国を回るんですよね。一館、一館。お願いします!って。そうするとね、え?って、映画のプロデューサーがこんなところまで来てくれたってね。じゃあうちはやりますよって言ってくれたりするんですよ。それが大事なんですよ。そういう仕事も出てくるしね。そうかと思うとね、宣伝という問題もあるでしょう、キャッチ・コピーをどうするかとか。それから今のポスターをどうするかとかね。だからここで終わらせると申し訳ないんだけど、雑用ですね」
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