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VOLUME 02

社民党の若きリーダーと肝っ玉作家が日本社会を斬る! 福島瑞穂×吉永みち子(2004.4.30収録)

 
社民党の若きリーダーであり、弁護士の福島瑞穂が、肝っ玉ノンフィクション作家の吉永みち子を迎え、日本社会の主流派を斬る!

福島 「こんにちは、国民年金、保険料をきちんと支払っている福島瑞穂です」
吉永 「私もきちんと支払っています。でもね、それを“個人情報でしょう!”と言った方がいらっしゃいましたよね」
福島 「あれは変ですよね」
吉永 「そりゃ個人情報でしょう。でも都合のいい個人情報は公表して、都合の悪い個人情報は隠してしまうというのは変ですよ」
福島 「年金の問題が強行採決になってしまって、公聴会も開かなかったんですが、そんな年金改革って何だろうと思います。年金は5年ごとに見直すことになっていますが、思い起こせば5年前の年金の見直しのときも強行採決でした。今回、未納三兄弟が増えてしまったということについてはどう思われます?」
吉永 「全部政治家を調べると、もしかしたら国民の未納率よりも多いんじゃないか・・・」
福島 「議員年金があるので国民年金をあまり重要視しない人もいました。それに、2世、3世議員の方は議員年金も国民年金もあてにしていないのかもしれないですね」
吉永 「あてにする必要がないんでしょう。昔の政治家は“井戸、塀”って言って、辞めた時には井戸と塀しか残らないって言われたもんですが、今はたくさん残るからね。特に利権にくっついている人たちは。でも、未納兄弟の人たちはみんながうっかりしてましたとか言い訳していましたよね。制度が難しいとか・・・」
福島 「制度が難しいというのは国民が言うべきことですよね」
吉永 「そうだよ。つくってる奴に言われちゃ困るよね。それこそ抜本的な改革をしてもらわなくちゃいけない。これだけみんなが分からない、作った人も分からない制度じゃね。給付を下げたり、負担を増やすというよりも、もっと以前にやらなきゃいけない問題がいっぱいあるよね。政治家すら分からない制度なのに、国民に信頼して安心して払い続けなさいというのは無理がある。だいいち、ずるいよね、政府案に責任持つべき総理大臣が政府案と全然違うことを言うのは」
福島 「そうなんですよ。私たちもおどろいてしまって。総理大臣が、政府案とまったく違う年金の一元化を言い始めたんですから」
吉永 「それがいいなら、やればいいじゃない!」
福島 「私は厚生労働大臣に厚生労働委員会で聞きました。総理が一元化と言っていることといまの政府案とはどういう関係にあるんですかって。厚生労働大臣の答弁は“総理大臣がおっしゃっていることが分かりません”だったんですよ。ずるいよね」
吉永 「政府案についてはみんながノーと言っているわけでしょう。ノーといってるときに小泉さんは自分だけ、いい子になっちゃったんですね」
福島 「そうです。彼は“ええ格好しい”だと思う」
吉永 「反自民の風が吹いているときは“自民党をぶっ壊す、派閥をぶっ壊す”と言っておきながら、自分は派閥に乗っかって自民党はぜんぜん壊れてないでしょう。反自民の嵐の時に“自民党をぶっ壊す”と言って、自民の中とは違ういい子の場所にいるわけ。ああいうところはすごいよね、まいっちゃう。あれが許されるなら私もやってみたい」
福島 「民間の人の年収を調べると、2500万円以上が増えています。微増ですけど。そして、200万、300万、400万の人も増えて、500万から1000万円の人たちが減っています。二極分解ですよね。いま労働相談をすると、年収200万円台で仕事を二つも三つも掛け持ちしている人たちが実際に出ています。だから、森永卓郎さんの『年収300万円時代を生き抜く経済学』が売れるんでしょうか?私も読みましたけど」
吉永 「みんな自分も300万円クラスに入ると思っているからあの本が売れるのかな?」
福島 「自分はまだ300万円に入らないけど心の準備にと思っていたら、あっというまに入っちゃったという人もいるかもしれませんね。女性の場合は昨年、半分以上がパート、派遣、契約社員といった非正規雇用者が占めるようになりました」
吉永 「年金の問題にも関わってくるけど、企業は正規雇用者をどんどん減らしてパートでやっていくようになるんだよね」
福島 「今回はパートの厚生年金の加入問題は先送りになりました。確かにパートの人に厚生年金を払えというのはものすごく負担増なんですよ。やっぱり企業が均等待遇をして、正社員と同じ仕事をしている場合は労働条件をきちんと整えると同時に、できるだけ多くの人が年金に加入できるようにすべきですよね」
吉永 「それが抜本改革だよね。抜本の“ば”の字もないのに抜本、抜本と言うから破綻するんだよね。私は年金は破綻すると思う。人口が増えない限り今の年金制度は絶対無理。あちこちに穴がたくさんあるし、加入者が増えないことには制度そのものが破綻するということでしょう」
福島 「でも、どんな人でも超大金持ちにはなれません。それに、もしかしたら100歳まで生きるかもしれません。だから、年金というお互いに支えあう制度はちゃんと整えておかなくてはだめなんです」
吉永 「今、子供を育てているお母さんに一番負荷がかかっていると思う。それは専業の主婦の人もそうですし、働きながら子供を育てている人もそう。子育て中にかかる負荷がものすごく強い。だから子供を産まないとか、虐待してしまうとかの問題が起こっています。虐待したときに鬼の母だとか、やっぱり女が社会にでるとろくなことがないとか、そういう観点ではないところで、きちんと問題を取り出していくことが大切だと思います。そうしないと昔にもどってしまう」
福島 「昔はよかったという話になってしまう・・・」
吉永 「いま世の中は、男女共同参画で男性も女性も自分らしく生きようという良い方向に社会が曲がろうとしています。曲がるときにはやはりきしむよね、そのきしむ所に出てくる一番弱い部分、一番大変な部分の問題をきちんと取り出して考えなくてはいけないと思う。女の脳と男の脳は違うんだとかね、そういうことじゃないと思う。脳というのは100万人いたら100万個の脳があって、100万個の生き方があるのに、それを2つの生き方に分類することが問題なんだと思う。今までのように、片方は経済能力がない、片方は生活能力がない、それで二人くっついて一人前ということではなくて、男性と女性がそれぞれ一人でも生きていける同士になり、それがどんな人間関係を築いていけるかということだと思う。その関係には標準世帯ではとても現せない多様な結婚形態や生活形態があるはずです」
福島 「厚生労働省の2025年の標準世帯は、お父さんがいて、妻が40年専業主婦、子供が2人いる。イラストを見るといつも女の子と男の子で、犬がいます、それが標準世帯です。でもそれは全体の4分の1以下になっています。厚生労働省は皆さんが働いていたときの50パーセントを保証しますとよく言いますが、それは標準世帯だけでシングルの男性や女性はもっと低い。何か変ですよね。やはり年金というのは、歳をとって一人になっても生きられるという個人単位にして、最低限度の安心年金を保証すべきなんだと思います」
吉永 「すべてそうなんですが、自分たちが自立できるというところから発想していかなきゃいけないと思う。福祉もそうだと思うんだけど。介護という言葉はあまり好きじゃない。やはり自立支援というべきだし、きちっと人間として一人でも生きていけるようにしなきゃいけないと思うんです。お金あげるから誰か雇いなさいよ、誰かに頼みなさいよという問題ではなくて、人として生きる限り、自立できるという方向で引っ張ってもらうのが一番だと思う。国のためにも助かるし、その人のためにも助かる」
福島 「いろいろな生き方を許容する社会になったほうがいいわけですからね」
吉永 「それと、若い人たちと、女性の雇用をどんどん上げていくべきだと思う。やはり変革は主流派にいた人にはなかなかできない。やはり反主流じゃないと。制度設定に関わっていない人にはその制度の問題点がよく分かるんです。つくった人はだめ。自分の絆創膏は痛くてはがせないけど、人の絆創膏はぺっとはがせるから。そしてやっぱり、若い人と、女性がいっぱい声をあげて社会に参画してきて、初めて日本は変わっていけるのかなと思います。福島さん頑張ってね!」 TOP

<吉永みち子>
1950年生まれ。東京外語大学卒。日刊紙の記者を経て、77年、騎手の吉永正人氏と結婚。85年「気がつけば騎手の女房」で第16回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。自らの体験と豊富な取材に基づいたノンフィクションを数々発表。「子供を蝕む家族病」(小社刊)、亡き母との葛藤を綴った「母と娘の40年戦争」(集英社文庫)、「性同一性障害」(集英社新書)、「老婆は一日にしてならず」(東京書籍)など、弱者の視点から家族問題、社会問題を取り上げている。
 
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