JAPAN FM NETWORK


VOLUME 02

金田一秀穂のことばの歳時記
 
しのぎを削る
「参院選で各党がしのぎを削っている…」「しのぎ」とは何だろうか?
「しのぎ」とは、刀の刃と峰の間にある膨らんだ部分のこと。そしてその部分が削れるほどに激しい刀の交わりがあるような戦いのことを「しのぎ」と言います。今では「戦い」というよりも、「激しい競争」の意味で使われています。せいぜいしのぎを削って、いい政治を考えてもらいたいものですね。

「大丈夫ですか?」
ある人が2千円の電気スタンドを見つけて、代金をカードで払おうとしたら、「1回で大丈夫ですか」と聞かれたそう。「1回でいいですか」という意味なのだろうか。ファミレスで、コーヒーポットを持ったウェイトレスが「コーヒーは大丈夫ですか」、コンビニで店員が「袋に入れなくて大丈夫ですか」…。気になる日本語であるが、「大丈夫ですか?」ではなく、「〜でよろしいでしょうか」で良いのではないだろうか。

傘驚き
傘の季節、地下鉄の階段を上がって、狭い出口でみんながいっせいに傘を開くと、びっくりすることがあります。「傘驚き」とは、傘を開くのを見て、馬が驚くことから来ています。鎌倉期の本にも登場することから、当時既に存在した言葉と言えます。ちなみに今でも乗馬クラブでは、「傘を開かないでください。馬が驚きます」という掲示が出ると言うことです。なんとも昔の日本人のユーモラスさが伺える言葉と言えますよね。

すがすがしい
さわやかで気持ちが良い。さっぱりとしていること。
古事記にも出てくることば。「すが」は清浄、清らかなであることを表わします。未練やためらいがなく、思い切りがいいという意味もあり、そこから物事の進行が滞りなく、すらすらと進むという意味もあります。また“サクサク”にと似た意味もあります。せめて気分は、古事記の時分の人と同じように「すがすがしく」ありたいものです。



<金田一秀穂>
杏林大学外国語学部教授。1953(昭和28年)東京生まれ。祖父・京助、父・春彦に続いて日本語の研究を専門とする。上智大学心理学科卒業。東京外国語大学大学院日本語学専攻修了。中国・大連外語学院、米・イェール大学、コロンビア大学で日本語を教える。94年ハーバード大学客員研究員。著書に『新しい日本語の予習法』(角川oneテーマ新書)など。
 
  BACK  
COPYRIGHT (c) 2004 JAPAN FM NETWORK All Rights Reserved.
HOME BACK