ジョギングのファイティングポーズは闘いの象徴!
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北川 |
「浅野知事といえばランニングですよね」 |
浅野 |
「17年目なんですね、走り始めて。39歳から走っていますから。年間1800キロくらいですから。延べで3万キロは走ってます」 |
北川 |
「それは朝ですか?」 |
浅野 |
「朝です、あさのしろうですから(笑)。走るのは、精神衛生上すごく大きい。知事になりたてのころ、走れなくなったら知事を辞めると言ったら、秘書課長がめっそうもないことを言わないでくれって。走るというのは、そんなに一生懸命走っていなくてもファイティングポーズなんです。走るというのは挑戦するという感じなんですよ。闘う姿勢が生まれてくるんですね」 |
県民の”怒り“が燃えた、宮城の乱― |
北川 |
「中央官庁のお役人として堂々たる人生を歩まれていたのに、それを辞めて知事に出馬された動機は何でしょう?」 |
浅野 |
「最初の頃の動機は怒りです。私の故郷の前知事がゼネコン汚職で逮捕されたということは、県民まるごと恥辱を負っているようなものですよね。でもやっぱり、自分が本気で出馬するとなると、勝てるのだろうかとか、もし駄目だったらどうするかとか、家族が路頭に迷う情景が頭に浮かびました。思い悩んだんですが、結局そういうふうに悩んでいること自体が打算だと気がついたんです。そもそも出馬を考えたのは怒りだったわけです。その怒りというのは当時の宮城県民も共有していたんですね。その原点に戻ったら足の震えが止まりました」 |
組織の腐敗は隠すことから始まる― |
浅野 |
「情報公開とは何かということを経験で学んできたときにわかったのは、隠そうとすると腐敗するんですね。悲しいことに、これは普遍的な事実です。だから必要以上に隠すというシステムは撤廃すべきです。〈隠さないこと〉実はそれが組織を守ることなんです。僕はよくケンカしていると言われるかもしれませんが、これは相手の組織のために言ってあげていることなんですよ」 |
北川 |
「よくわかる。実はそのほうが親切なんですよ。今までのように、隠して隠して、被害を最大限に大きくして、永遠に解決できないようなやり方はもう駄目なんですよね。」 |
浅野 |
「僕がよく使うたとえ話ですが、左手に腫瘍ができて、それをほおっておくとどんどん広がって心臓まできて組織全体がやられてしまうことがわかっているときに、自分の右手で自分の左手を切れますか? これは切れないんですよね。だからナイフやメスは違う客体に持たせなければいけない。そのときに知事とは何なのかと考えさせられました。知事がその組織のトップと位置づけるなら左手を切ろうとする右手の役割なんですね。でもそうではなくて、県民に選ばれて県庁という組織に送り込まれた存在とすると、別の客体がメスを持つことになるんです。そこで初めてスパッと切れるわけなんです」 |
最近の趣味はラジオ番組のDJ― |
北川 |
「知事をやりながらラジオのディスクジョッキーをされているそうですが?」 |
浅野 |
「もう5年くらいになりますかね。毎週水曜日、ラジオ3というコミュニティFMです。これは世界でもまれな番組だと思いますよ。エルヴィス・プレスリーの曲しかかけないんですから。全くの趣味ですよね。中学、高校をかけてプレスリーのレコードを毎月一枚一枚買いそろえてきて、自分の部屋でディスクジョッキーごっこをやっていたんです。一人で、むなしいですね。誰も聴いてないんですよ”ごっこ“なんですから。はい、今週のヒットパレード、とか言いながら、自分で順位をつけてやってました。それが40年も経って、ちゃんと聴いてくれる人がいるんですから、こんなうれしいことはないですよ。現在、番組は県内6つの局でカバーしていますよ。エルヴィス・プレスリーとの出会いが人生を変えたんです。プレスリーに本当に心酔しましたからね。単にロック歌手が好きだというのではなくて、のめり込みました。愛していたんですよ全身全霊で。それで、プレスリーを生み育てたアメリカに行きたい、住みたいと思って、就職するときもアメリカに留学できるようなところ、そんな想いが常に頭にありました。国家公務員になって2年目で留学制度に手を挙げてアメリカ留学するようになったんです。勉強したいというのも半分はありましたが、プレスリーのアメリカへ行きたいというのが大きかったですね」 |
新しい県政を築くのは知事の個人技か!― |
浅野 |
「北川さんが僕のところに近づいてきたことが、知事仲間のあいだで個人技が広がっていくストーリーの始まりだったんですよ」 |
北川 |
「各県のボーダーを越えて、皆で研究しあおうというムードができたのかな」 |
浅野 |
「いいことは真似しようと。別に特許料取らないんだから。北川さんが言いだした”カナリヤ理論“(※)ですよ。もし失敗したらそっちに行かなきゃいいんだから。一人の人の経験に止まらず、いい面ならタダで真似しよう、もし、失敗したらそっちの轍を踏まないようにしようと。美しく言えば連帯ですけど、連帯ともちょっと違うんですよね。それなりのライバル意識もあって、どうせ真似するにしても少しは付加価値を付けたり、乗り越えようと。それは本当にいいことだったんですよね」 |
北川 |
「知事になったときに、政治家の官僚不信、官僚の政治家不信があった
んです。これをどうこなしていくかというときに僕は職員と対話をして、何十時間も何百時間もかけてこなしてきた」 |
浅野 |
「僕はセンス・オブ・ワンダーという言葉をよく使います。つまり驚きの感覚ということです。それは非常に大事だと思います。なんか変だなあ、という感覚なんですよ。わかりやすく言えば、違和感ですね。北川さんが三重県庁に入った時は、私が宮城県庁に入ったときの違和感の何倍もあったと思うんです。だって初めてでしょう、官僚の親分になるなんて。入ってみたら言葉づかいから違うでしょう。思考形態、行動様式、おかしいなと思ったでしょう。僕は幸か不幸かあまり思わなかったわけです。なぜなら僕自身が役人やってきたわけですから。北川さんはセンス・オブ・ワンダーという部分において一日の長があったと思うんですよ」 |
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(※)炭鉱のガス探知で用いられたカナリアにたとえ、人の失敗した方向へは向かわず、良い面は真似しようというもの。
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