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創刊0号

ヒトゲノムを解読!話題のキーマンが語る! 村上和雄(筑波大学名誉教授)×八塩圭子
 
八塩 「感性と遺伝子はつながっていると?」
村上 「あくまでも私の仮説ですが、それを何とか証明したいと思ってるんですね。
遺伝子は私たちが生きている限り絶えず動いているんですよ、ダイナミックに。だから遺伝子は環境に応じて寝たり起きたりする。つまり遺伝子にはONとOFFのスイッチがあるんです。だから阪神が優勝したのは、選手そしてファンの遺伝子のスイッチがONになったからですわ。そんなんじゃなかったら道頓堀に飛び込むことなんてあり得ないですよ。普段OFFの遺伝子がONになった。体の総司令官は遺伝子。出来ると思えば何でも出来るという力が、まだ人間の遺伝子には眠っているんですね」
科学者のようでいて、科学者ではありえないような、大胆な仮説と発想の持ち主、そしてその仮説を次々と実験・分析で読み解いていく。
村上 「いきいきした楽しいことをやると疲れないのに、嫌なことをやるとものすごく疲れる。
心の持ち方が我々に影響を与える。ではどこに影響を与えるのか?と。私の仮説では、それは遺伝子だと思うんですよ」
八塩 「病は気からとかポジティヴ・シンキングとか、明るく前向きに考えれば、病も進まなくなる、物事がうまくいくなんて言ったりしますけど…」
村上 「実は吉本興業と組んで、笑いがどの遺伝子に影響を与えるかという分析をしたんですよ」
八塩 「で、どの遺伝子に影響が出たんですか?」
村上 「いやいやまだそれは内緒。まだまだ研究途上だから。でも分かったことは、高血圧の患者さんの血糖値が下がるということが分りました。面白くない大学の講義を聴いて血糖値をあげるんだったら、漫才でも見て笑った方が人の体には良いんですわ」
八塩 「では、処方せんに<お笑いビデオ>なんて書いてある日も近いかもしれませんね」
村上 「まともな医者はこんなことやりません。でもこれは医療革命なんですよ。笑いについては、<天照大御神の岩戸開き>なんかでもそうですが、すべての国々の神話に笑いというものが出てくるんです。だから『神話から暗号解読まで』なんていう笑いの本をいずれ書こうと思って」
哲学の分野でも「笑い」は興味・研究の対象であるが、笑いを科学(医学)する時代がついにやってきた!そして今年4月、ヒトゲノムの解読完了!
八塩 「ところで遺伝子の暗号とは誰が書いたのですか?」
村上 「まあ両親でないことだけは確かですよ。自然が書いた。大百科事典3000册分(文字にして30億の文字分)なんですよ。アンビリーヴァブルでしょ?これは自然が書いたとしか言いようがないんですよ。目に見えない自然の存在って言うものがあるんじゃないかと思って…。僕はこれを<自然の偉大なる存在=サムシング・グレート>と呼んでいる」
八塩 「それってなんか宗教とつながりませんか?」
村上 「21世紀は宗教家が直感したことを、科学者が語る時代なんじゃないかと…。科学と精神世界のコーディネーターになろうとずっと思っていたら、今度ダライ・ラマ法王と講演をすることになりまして。宗教と科学が相補っていくと、面白いものが生まれるんじゃないかと思いますね」
言葉の端々からこぼれる小気味良い関西弁に、場が和む。そしてまた笑いが起こる。
八塩 「奈良県生まれと言うことで、どんな子供だったんですか?」
村上 「あまりパッとせん子供だった」
八塩 「遺伝子がOFFになってました?」
村上 「あははは。ただね私が中学校の時に湯川(秀樹)先生がノーベル賞とられたんですよ。子供心に嬉しかったですよ。戦後まもなくで“日本人にもやれる人がいる”というのが希望だったの。で京都大学に行きたいと思ってたんだけど、とっても無理やなとその当時は思ってたんですよ」
八塩 「でもそこでがんばろうというスイッチがONになったんですね」
科学する合間に、ふと幼少から馴れ親しんだ古都に息づく日本の文化・伝統を思うことがあるという。科学の領域を越えた発想の源は、意外にこの辺にあるのでは?
そして最後は我々日本人・日本文化論へダイナミックに展開。
村上 「私は京都や奈良という日本の文化・伝統があるところで育ったんですが。実は今年、稲の遺伝子解読のために伊勢神宮に行きまして、そこの森、水という豊かな環境を見て、ここでは2000年来にもわたり、田植えをし、神様に一年の豊作を祈るという行為をやってきたんだということを改めて実感しました。“これは日本のルーツだ”と思いましたね。最近“おかげさま”っていう言葉あまり使いませんけど、みなさまの“おかげ”、自然の“おかげ”、そして<サムシング・グレート>の“おかげ”。日本民族と言うのは21世紀には出番が来ると思ってるんですよ。伝統文化を持ちながら、科学技術をマスターし、経済大国になったわけですよね。こんな国、このバランスを保てる国は他にはないんですよ。これからは日本の出番が来ると思いますね。」ヒトゲノムの解読をもとに、遺伝子の本格的研究が始まるのはこれからである。「これから博多で学会なんですわ」。「先生は本当にフットワーク軽いですね」と聞くと、「私もまだまだいけるかな?」
と笑いながら、「ではまたダライ・ラマにあった後にでも…」とスタジオを慌ただしそうに出ていった。 TOP

<プロフィール>
村上和雄 1936年奈良県生まれ。
世界に先がけ、高血圧の黒幕といえる酵素「レニン」の遺伝子解読に成功。最先端の遺伝子工学の研究から「感性と遺伝子は繋がっている」ことを究明。科学のみならず哲学、宗教、宇宙観をも包み込む、独自の世界観を展開。現在ノーベル賞の有力候補とされている一人。

11/2(日)には両国国技館で、ダライ・ラマ法王、小柴昌俊東京大学名誉教授と講演会を行う。
 
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