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8/16(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポータ、シェリーめぐみさんからの報告です!

前から何度かお話していますが、ニューヨークのアップタウンスタジオというのは、
ハーレムというブラックコミュニティのど真ん中にあります。

スタジオ前に駐車した車のカーステレオからはヒップホップが流れて来る、
そんな環境なんですが、

そんなアップタウンスタジオからお送りるす話題は、
ヒップホップをテーマにした映画と映画監督。

しかもアメリカの映画ではなく、日本映画、
「SR サイタマのラッパー」と、入江悠監督です!

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SRサイタマのラッパー3部作は国際的な映画祭から招待されていますが、
今回は、ニューヨークの夏の日本映画祭、ジャパンソサエティの
ジャパンカッツで招待上映されました。

日本のラッパーが主役の映画が、ラップが生まれた街にやってきた!
ということで、ヒップホップ好きのシェリーめぐみとしてはぜひ見なきゃと!

さらに驚いたのは、この3部作実はすべて自主制作。入江監督の自費で作った映画!
なぜラッパーの映画を3本も、しかも自費で? 

ラップの聖地ニューヨーク、アップタウンスタジオから、
入江監督のインタビュー、発信です。

入江監督、ではまず自己紹介からお願いします!


入江「SR埼玉のラッパーというシリーズを監督している入江と申します。よろしくお願いします。」

*お願いします。入江監督、今ニューヨークですが、ニューヨークと言えば
ヒップホップ発祥の地なんですが、その場所にラッパーの映画を持ってきて
上映するというのはどんな気分ですか?

入江「2年前に埼玉のラッパーの一作目と二作目を両方同時に持って来て
上映してもらったんですが、その時は興奮しました。
お客さんでヒップホップが好きな人がいて、ニューヨークのヒップホップの聖地を
案内してもらって楽しかったですね。」

やっぱりかなりのヒップホップ好きできですね、入江監督。

「SRサイタマのラッパー」シリーズ3作目「ロードサイドの逃亡者」
舞台はニューヨークではなく栃木、
主役のラッパー、マイティーは、一生懸命やっているのに
どんどんやばい深みにはまってしまう、
笑いもあるけれど、ハラハラしどおし、真剣に見てしまいます。

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それにしても、ラッパーが主役の映画を3本も、しかも自費で作ってしまった、
その思い入れって何なのか? 聞いてみました。

「自分がヒップホップ好きだったのと、日本にラップをテーマにしたちゃんとした映画が
なかったんですね。インディペンデントで作ろうと思っていたので、
メジャーなところに持って行っても通らない企画をやろうと思ったのもあります。

自分が埼玉県の田舎出身なんですが、そこでラッパーを目指している若者の話を
やろうと思いました。ロックやジャズと違うラップの面白さって、町中とかで歌えたり、
ステージがなくてもできちゃうのがラップの面白さだと思っているんで。
ヒップホップって面白い発明だと思うんです、音楽のジャンルの中で。
色々なものをサンプリングして作ったり、人の曲でラップしたりするのが面白いな、と思って。
特にヒップホップの中でもラップの面白さってあるんですが、それがあまり伝わってないというか、
もっとラップでコミュニケーションする面白さってあるのにな、と思って作った部分もあるので。
日本だとヒップホップにまったく興味がない人や、ラップに抵抗がある年配の人が
見に来てくれるのがすごくうれしいですね。」

なるほどー、ラップは発明。

ちなみにアメリカのヒップホップ・レジェンド、ICE-Tいわく
「ラップは何もないところから生まれた芸術」

貧困や差別、偏見といった厳しい環境から這い上がってきた音楽だからこそ、
人に生きる力を与えてくれる。
だからサイタマのラッパーも、ものすごく元気をくれるのかもしれません。

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さてここで話は戻って、SRサイタマのラッパーシリーズ第一作は2009年公開、
日本映画監督協会新人賞
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリ
富川(プチョン)国際ファンタスティック映画祭で、最優秀アジア映画
そしてジャパンソサエティの夏の映画祭ジャパンカッツへの招待は今回で2回目。

入江監督は最初から海外を目指していたんでしょうか?

「いや、全然ないですよそれは。日本でも公開が決まるかわからないまま作っていたので。
日本でロングランしたのも当時は奇跡だと思っていましたから、
海外で上映してもらえるなんて思ってもいませんでした。
映画館で自主映画がかかるというのも、当時そんなになかったですからね。」

*何がそんなにウケたと思いますか?

「自分ではわからないんですが、埼玉のラッパーってまだ市民権も得られていないような
ローカルな場所で、ラッパーを目指す若者の話にしようと思っていたので、
あまり“成功”するような話じゃないんです。
すると予想以上に、一回挫折した人や夢が破れた人の方が応援してくれているんですよね。
みんながみんななりたいモノになれるわけじゃない、でも人生は続いていく。
それをどうするのか、というのが誰もが同じテーマだと思うんですよね。」


誰もが持っている同じテーマ。。。
サイタマのラッパーたちは夢の途中で、
しかも何かを背負ってしまっていて、
どちらかというとかっこ悪い生き方をしている。
そんな自分とどこか似ている主人公たちに、勇気をもらったり、時にはなぐさめてもらったり。

*では入江監督自身は、やはり夢の途中なんでしょうか?

「僕は世代的にハリウッド映画全盛期、バック・トゥー・ザ・フューチャーとか
ターミネーターとかで育ったので、ターミネータみたいな映画やSF映画をとるのが夢なんです。
そういう意味ではまだまだ夢の途中という感じです。
でも自分自身埼玉のラッパー3作目まで来れたんで、
またここでニューヨークに戻って来れたという事を考えると、
続けるのが意味があると思うんです。やめちゃったらそこで終わるんですけれど、
続けて行けば少しずつでも自分の夢の方に近づいて行けるんじゃないかと思いますけれど。」

*サイタマのラッパーはこれで一応終わりですか?

「そうですねこれで3部作として区切りにして、これから別の映画を
考えていきたいと思っていますが、機会があったらまたショーグンという
サイタマのラッパーにカメラを向けてみてみたいと思いますけれど。
自分の分身みたいなところがありますから。彼らの人生もまだ続くと思うので。」


あきらめずに続ければ少しずつでも夢に近づいていける。。。
それがサイタマのラッパーの生き方。私たちの生き方でもありますよね!?

長い人生この先どうなるのか、
入江監督、そしてサイタマのラッパーたちに、その生き様を見せてほしいですね!

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シェリーめぐみ  
ニューヨーク在住、フリージャーナリスト&プロデューサー。
アメリカを日本に伝え、日本をアメリカに伝える相互プロジェクトを数多く手がける。
J-POPファンのための英語サイトSAMURAIBEATRADIO.com(サムライビートレイディオ)」
ブラックコミュニティと日本をつなぐメディアHARLEM2NIPPON.comをプロデュース。
BLOG:http://megumiradio.com