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5月15日(火)のフラワーレポーターはスペイン・マドリードにお住まいの中村美和さんです!

◆今日、お祭りが開かれているそうですが、どんなお祭りなんでしょうか?


今日、5月15日は、マドリード守護聖人であるサン・イシドロの日で、マドリード市にとって重要なお祭りのひとつサン・イシドロ祭りがおこなわれ ます。今日は街を歩けば、男性は千鳥格子のハッチング帽にお揃いのベスト、女性は裾の広がったドレスを着て、頭にカーネーションを飾りスカーフを巻く、 マドリッド伝統的な衣装に身を包んだマドリッドっ子たちに会うことができます。この伝統のスタイルは、男性はCHULAPO(チュラポ)、女性はCHULAPA(チュラパ)と呼ばれています。マドリード下町の粋なスタイル、という意味です。


◆「サン・イシドロ祭り」の日は、みなさん、どんな風に過ごすんですか?


伝統的な風習では、この日は巡礼をして、そのあと川原でピクニックをして、ロスキジャと呼ばれるドーナツのような形のお菓子を食べたり、チョティ スと呼ばれるダンスが踊ったりします。 この様子は、ゴヤも絵に描いています。


◆スペインのお祭りというと「闘牛」のイメージがありますが、やはり、闘牛も行われるんですか?


スペインのお祭りには闘牛がつきものですが、特に、マドリードでは、このサンイシドロ祭りにあわせて、毎日のように闘牛が開催され、花形闘牛士たちが連日、自慢の技を見せ合います。この最大級の闘牛の祭典に参加することは、闘牛士たちにとても大きな意味があるといわれています。というのも、目の肥えたマドリードの闘牛愛好家たちを前に、正々堂々と高い技術と勇気を見せて観衆の喝采を浴び、肩にかつがれてラス・ベンタス闘 牛場を退場することをは、非常に難しいことである反面、闘牛士の誰もが夢見る成功の形なのです。一方で、万一にもこの晴れやかな舞台で失敗してしまえば、辛口のマドリードの観衆の容赦ない罵声をあびることになります。そういう意味で、人気闘牛士にとっても、非常に困難でプレッシャーのかかる大舞が、このマドリードのサンイシドロの闘牛なのです。
「生きるか、死ぬか」「栄光か屈辱か」。
それはまさに、闘牛の美学そのものといえるかもしれません。


◆闘牛とは、素晴らしい芸術でもありますが残酷だと感じる人もいますよね。この点は、以前から話題にのぼっていますが、スペインでは、どんな風にとらえられているんでしょうか?


スペインといえば、まずフラメンコと闘牛、というイメージを持つ日本の方も多いのではないでしょうか?しかし、綺麗な衣装を見にまとった闘牛士が牛を相手に華麗に戯れるというイメージだけを持って闘牛見に行って、実際に闘牛観戦に行ってショックを 受ける外国人観光客も多いようです。人間の娯楽のために目の前で牛が殺されて、血まみれになる姿は、確かに予想以上に生々しく強烈な光景です。


闘牛に反対する動物保護団体などの抗議行動などがおこなわれるたび、闘牛が芸術であるのか、あるいは野蛮で残酷な動物虐待なのか、スペイン国内で も盛んに議論になります。実際に、日本でもニュースになったと思いますが、今年の1月からバルセロナなどがあるカタルーニャ州では、闘牛が禁止されました。禁止されたのがカタルーニャであったことは、政治的な意図もあったとは思うのですが(カタルーニャ州はスペインからの独立機運も高い地域のひとつ で、日頃から「我々はスペイン人ではなく、カタルーニャ人」と主張しています。)、それはさておき、私も個人的にも、闘牛の是非に対しては何かし らの明確な結論には達していません。ただひとつ言えることは、闘牛は長い歴史の間に受け継がれ、それを目にした人々に、何がしかの感情を呼びおこしてきたものである、ということで す。ゴヤやピカソなどの画家たちや、ヘミングウェイやロルカのような作家たちの心を揺さぶり、絵画、小説、詩、映画などの創作意欲をかきたててきまし た。血にまみれた壮絶な死と戯れる闘牛士の姿、時に愚かともいえるほどの無謀な勇気、それに熱狂する人間の姿に、日ごろは目をそむけている何かを、私 たちの目の前に引きずり出します。たとえば、ポルトガルやフランスなどの闘牛では牛を殺さないといわれていますが、それは観客の目の前で殺さないだけで、闘牛の終了後にはやはり牛 を殺します。また、闘牛ではなくても、人は食べるために牛やその他の動物の命を日々奪っています。場外で人目を避けてひっそりと殺すことや、スーパーマーケットにパックにつめられて綺麗に並べられたものを食べることは残酷ではないと言えるので しょうか?生きるということ、殺すということ、普段の生活ではきれいに隠されているそれらのことを、明るい陽の元に引きずり出してきます。そして、そういう部分が、天才たちの創作活動にインスピレーションを与えてきた部分なのかもしれません。
そういったわけでスペインの文化と精神、芸術に深く根付いた闘牛は、ともかく急速に全面廃止になるということは考えにくく、スペイン国内でも闘牛 に対する議論はこれからも続いていくでしょう。

中村美和さん
●http://www.todomadrid.info/●