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7月13日(水)のフラワーリポーターは、イギリス・ロンドンから現地に住んで11年、映画ジャーナリストをされています信夫梨花さんです。

●ロンドンの街の様子は?

現在、夏真っ盛りです。週替わりで暑くなったり、
雨が降って涼しくなったりという繰り返しかもしれません。
気温は大体20度前後でしょうか。また、夏のセールの真っ最中です。


●『ハリー・ポッター』最新作の本国イギリスでの評判は如何ですか?

歯に衣着せぬ批評を下すイギリスのマスコミからの評判も上々です。
作 品のレビューにも楽しい、面白い、エキサイティングといった言葉が並んでいます。
映画のプレミアはいつもロンドン中心のレスター・スクエアで行われるのですが、
今回はその隣のトラファルガー広場が会場となりました。
7月7日のプレミアの3日前から数百人のファンが列 を作り、
テントを張って待機し、当日は数千人が集まりました。
ここ数 年、ハリー・ポッターのプレミアの日
今年は最後のハリー・ ポッター作品ということで、トラファルガー広場が会場。
ハリーポッターのプレミアはここ数年、いつも土砂降りの大雨で、
一昨年前の7月7日の『謎のプリンス』のプレミアの時には雹まで降ったりしたのですが、
雨が降ると映画が大ヒットするというジンクスがあります。
今年は午前中、大雨でしたが、夕方から雨が上がるという絶好のパターンでした。
シリーズの映画化は10年前に始まりましたから、
この映画を最初に観た時に10歳だった子供たちも今は二十歳。
ハリー・ポッターと一緒に成長してきたファンは、
「まるで自分の子供時代が終わるような気がする」と語っています。
                
                 
●『死の秘宝 パート2』の一番の見所、注目すべきところはどこですか?
                       
この作品はシリーズ最後の本の後編ですが、主演のダニエル・ラドクリフが
「まるで戦争映画みたい」と言っているように、前作のパート1が物語の前説で、
謎を提示するものであったとしたら、今回の作品ではそれらが全て解決され、展開します。
地味で静かだった前作と比べると、今回はファンタジーの要素が満載です。
主役のトリオをはじめ、出演者の子供たちはこれが最後の作品であることを意識していたため、
全力を尽くして良い映画にしようと努めたそうです。
既に前2作を大ヒットさせているデビッド・イェーツ監督が手がけました。
また、今回はシリーズ初の3D作品でもあります。これまで3Dカメラで撮影されず、
編集作業で3D加された作品はあまり評判が良くなかったのですが、
この作品については良く出来ていると言われています。
                   
                     
●ハリー・ポッター・シリーズが、世界的にロングラン&大ヒット作品となった理由、背景は?
                                 
まず、原作の内容、文体ともに非常に面白く書けています。
文章がユーモラスで、ファンタジーの世界へ自然に引き込まれます。
ホグワーツ魔法学校の様式は、イギリスのパブリック・スクールと呼ばれる
私立のエ リート教育機関のものですが、ここに入学できるのは5%程度なのに、
オックスフォードとケンブリッジという2大エリート大学の学生の半数は、
パブリックスクール出身であるといわれています。
現実世界ではハリーは叔父さんの家の居候として、
最初は確か階段の下の物置を部屋としてあてがわれていましたよね。
そこで従兄弟に苛められ、冴えない風貌のハリーが、ある日、
別世界の魔法学校のエリートとして選ばれ、ヒーローとなり、
成長していくという夢のような物語です。
これはアメリカ資本の映画ですが、制作スタッフはイギリス人です。
イギリス映画界には優秀なスタッフと最高の俳優が揃っています。
マイケル・ガンボン、ケネス・ブラナー、エマ・トンプソン、レイフ・ファインズ、
アラン・リックマン、ヘレナ・ボナム・カーターなどなど子供たちをバックアップする脇役が、
いずれも一流の俳優で、シリーズはイギリスの俳優カタログとしても楽しめます。
これらの俳優たちに支えられて、子供たちも俳優として見事に成長しました。
シリーズ化しても手を抜くことなく、一作毎にますます質がアップしており、
大人も楽しめる作品になっています。
2001年から映画化され、著者のJKローリングが全作品を書き終えたのは2007年ですが、
原作も映画化された作品に影響を受けていることは間違いなく、
原作と映画が互いに刺激し合いながら発展した特別なフランチャイズと言えるでしょう。
JKローリングの母親は十年間の闘病の末に亡くなりましたが、
彼女は母親が亡くなった日にハリー・ポッターのアイデアを閃き、書き始めたそうです。
つまり母親の死がなければ、生まれなかった運命的な作品です。
周囲の人々の死を体験して成長するハリー・ポッターの姿は作品の主要なテーマであり、
ローリング自身でもあるということです。
魂の叫びともいえる作品ですから、人々の心をつかむのです。
                            
                        
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