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6月21日(月)ブラジルからサッカージャーナリストの大野美夏さんのtレポートです。


W杯南ア大会が始まった!

ブラジルでは、ワールドカップ(W杯)のことをコッパと言います。

コッパとは、正確には英語のCupのことで、ワールドカップはコッパ・ド・ムンドが正式名称なのですが、略してコッパといえばすなわち、W杯のことを指します。

さて、世界で唯一、1930年の第一回ウルグアイ大会から全大会出場している国と言えば?

サッカー王国、ブラジルです!

この国に人たちにとって、コッパは4年に一回当たり前のように行われる大イベントです。

娘は9歳なのですが、1歳、5歳、9歳とこれまでに3回のコッパを経験してきました。1歳はもとより、5歳のときは、大きな印象に残ってないらしいのですが、今回は、「ブラジル!ブラジル!」と大騒ぎをしてます。

ブラジル人の人生はコッパとともに刻まれるのです。人生の節目に、常にコッパがあるのです。

さて、コッパとはブラジルにとってなくてはならぬ国民総出の大イベントなわけですが、いったいどれくらいすごいかというと・・・・。

問題です。次のどれが本当か?

1:ブラジルの試合の日は、学校が休みになる。

2:ブラジルの試合の時間は、働かない。

3:ブラジルの試合の時間の直前は渋滞が起こる。

4:ブラジルの試合中は、道から人が消える。

答えは、すべて本当です。

ブラジルの試合がある日は、特別シフトで物事が進みます。

たとえば、初戦の北朝鮮戦のあった15日、火曜日は15時半からの試合でした。

人々は、14時にすべてを終え、帰宅する、もしくは、試合を見る場所へと移動するのです。

ブラジルの学校は午前か午後の半日制が多いのですが、午後組は授業はなしでした。

銀行や官庁も、14時で終了。

そして、試合が始まると、道から人の姿は消え、車もほとんど走っていません。

まさに、ブラジルの試合中心に世界は回ってしまうのです。

サンパウロの街の盛り上がり

コッパが近づくと、街の中は、コッパカラーで埋め尽くされていきます。

コッパカラーとは?

緑と黄色のことです。もうおわかりでしょう?

ブラジルの国旗カラーです。

あちこちで国旗、W杯の応援グッズ、緑&黄色のグッズが売られますし、道をペイントしたり、旗を飾ったり、家やマンションもコッパカラーでデコレートしたり、お店のショーウィンドーも緑&黄色で埋まってしまいます。

コッパカラーを見ると、コッパになった!ととても気分が盛り上がります。

ブラジルを応援するときには、カナリア色のユニフォームがお約束です。

この季節は、応援用のTシャツなどがたくさん売られます。

試合の日には、ユニフォームじゃなくても、どこかにコッパカラーを身に付けるのもお約束です。

テレビもコッパ一色です。

テレビ、ラジオ、新聞等メディアの広告がW杯絡みになります。

W杯のオフィシャルスポンサーやブラジル代表のスポンサーでなくても、W杯カラーを使ったW杯に関係するコマーシャルが流れ、ますます気分が盛り上がるのです。

テレビの実況放送もブラジルならではのこだわりがあります。

地上波2局、有料放送が3局。計5局が同じ映像を流すのです。

いったいなんのため?って気もしますが、各局ごとの特徴があり、アナウンサー、解説者もいろいろです。自分の好みのチャンネルにこだわったり、あっちこっち変えたりと、とても楽しいですよ。

新聞は、連日30ページにわたり、コッパ情報を掲載します。読むところがありすぎて困っちゃうという感じです。

さらに、ブラジルならではのコッパの楽しみ方は、ラジオ。

何十局というラジオ局が、ブラジル全国で実況生放送をするのです。

テレビとは違った面白さがあり、批判も辛らつなのでなかなか面白いのです。

さて、今回のチームの評判ですが、

ドゥンガが意外にも人気がないんですね。

どの人気のなさは、実は90年W杯にさかのぼるものです。

90年W杯イタリア大会でブラジルは不甲斐ない敗退をしたのですが、その戦犯の一人がドゥンガでした。メディアに叩かれたイメージは、ずっとドゥンガについてまわり、ドゥンガもメディアが大嫌い。

現在も、ドゥンガとメディアの関係は非常に悪いものです。

互いに相手を最初からネガティブモードで見るので、なかなか歩み寄ることにはなってません。

しかし、ドゥンガはいいチームを作ってきています。

96年W杯ドイツ大会で、ブラジルは情けない敗退をして、CBF(ブラジルサッカー連盟)がセレソン(ブラジル代表)再生を託したのがドゥンガでした。

ドゥンガのフィロソフィーは、セレソンのスピリットを持つ選手しか使わないことです。

06年W杯ではスター選手に大騒ぎして、チーム自体はばらばらな印象になってしまった反省を含め、

ドゥンガは、一人のスター選手に依存せず、全員で国のために戦うというスピリットでチームを作ってきました。ですから、今回は特定のスター選手のチームというよりも、ドゥンガのチームです。

選手とドゥンガの信頼は非常に厚く、とても結束の固いいいチームになっています。

15日の北朝鮮戦を終えて

強豪といわれる国でもW杯の大舞台で、初戦は難しいものということから、徹底守備をしてきた北朝鮮相手に2点決め勝利し勝ち点3を手に入れたことは大きいのですが、一方で、内容的には批判が多かったのです。北朝鮮相手にあんなにてこずっていたら、強豪相手に勝てるのか?もっと攻撃していかなければという声が聞かれました。

娘の学校での会話でも、マイコンとエラーノのゴールはすごかったけど、試合自体はよくなかったとみんなが批判してたらしいです。

子どもでもこんな調子です。

ブラジル人の望むレベルは非常に高いので、勝利だけでは満足しません。

美しいゴール、華麗なプレー、スペクタクルを国民は望んでいるのです。

コート・ジ・ボワール戦は、北朝鮮戦よりもワクワクする試合でした。

ルイス・ファビアーノのゴールは、さすがブラジル人プレーヤー!という技ありシュートでしたね。

手を使ったうんぬんは、置いておいて。

ブラジルのゴールが入ると、あちこちで騒音!連弾で花火が打ちあがり、ラッパなどなどが鳴り響きました。

ゴールゲッター、ルイス・ファビアーノのほか、今大会の注目選手は、カカーとロビーニョです。

怪我から復帰の途中ながら、コート・ジ・ボワール戦で3点に絡む大活躍をしました。終了間際の混乱で、無実の退場を命じられたのは大ショックでした。

カカーほどの優等生はいません。

彼が、相手の選手に悪い行為をするわけなどないし、映像を見れば一目瞭然です。

フランス人の主審はアホ!と言われてます。

ロビーニョは北朝鮮戦で、一番良く動き勝利に貢献しましたし、コート・ジ・ボワール戦でもキープレーヤーぶりを発揮しました。ビシクレッタ(自転車)と呼ばれるドリブルがトレードマークで、パス、クロス、自らもシュートとなんでもこなせる攻撃の中心選手です。

今回のブラジルの攻撃の起点は右サイドが始まることが多いのですが、その底力が右SBのマイコンです。北朝鮮戦では角度のないところから信じられないシュートをしました。今期、インテルミランのメンバーとしてチャンピオンズリーグ優勝に貢献した実力の持ち主です。

同じくインテルのGK,、ジュリオ・セザールもスーパーセーブを繰り返す守護神です。

他にも、注目選手はたくさんいすぎて、紹介しきれませんね。

MFエラーノは、地味ながらドゥンガが一番信頼し、チームに最も貢献している選手。よーく見ていてください。

決勝トーナメントに向けての意気込み

ブラジル人にとってW杯とは決勝トーナメントからが本番。グループリーグは、まだウォーミングアップ段階に過ぎません。日に日に、コッパというお祭りにみんなが没頭していっています。決勝まで行けば、このお祭り気分が7月11日まで続くのですよ! 子どもから大人、男女関係なく、国民の関心が、一つに向いてまとまるという感じはコッパならでは!ですね。

つくづく、ブラジル人はなんと幸せな国民だろうと思います。

「役に立つ一言」

Valeu!(ヴァレウ)  やったね! いいじゃん! OK! みたいな意味。


大野美夏さんのウェブサイト

http://www.kibe.com.br/soccer/

ブラジル写真館

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