« 3月10日(水)のフラワーレポーターは、パキスタンで旅行会社を営む「アミン・ウラー・ベーグ」さんです! | メイン | 【webラジオ】3月11日(木)アメリカ ニューヨーク »

3月11日(木)はアメリカ・ニューヨーク在住のフラワーレポーター、佐藤めぐみさんからの報告です!

DST.JPG
(夏時間の前日に新聞にはこんな記事が)

先週のブログでも、番組でも間違い訂正&おわびした通り、
アメリカの夏時間は14日日曜日の早朝2時にスタート!!
あらためまして、みなさんごめんなさい!

さてさて、もうひとつの話題アカデミー賞。
意外な結果でしたね、
絶対AVATARだと思っていたのですが。。。。
対抗馬のHURT LOCKERが持って行ってしまいました。
Hurtlocker.JPG

もちろんニューヨーカーは驚いています。
でもなぜHURT LOCKERなのか? というとほとんどの人が答えられない。
なぜなら。。。
多くの人が見たAVATARと比べて
HURT LOCKERを見た人はほとんどいなかったからです。
Hurtlocker2.JPG

今日はオスカーの結果に対するニューヨークのメディアとニューヨーカーの半応を
レポートします。

超大予算、大収益で映画史を塗り替えたAVATARをしりぞけて受賞した、
イラク戦争をテーマにしたTHE HURT LOCKER
キャスリン・ビグロー監督はオスカー史上初の女性監督として、
ベストディィレクターの座にも君臨しました。
ご存知と思いますが、もともとこの2つの映画の対決は今回のオスカーの話題の中心でした。
共に9部門でノミネート、さらにAVATARのキャメロン監督とビグロー監督が元夫婦だったからですね。

翌日の新聞の1面は、
キャメロン監督がふざけて元ワイフの首をしめようとする写真でした。
ビグロー監督は笑っていましたが、キャメロン監督は内心本気だったかも?
oscar.jpg


そしてニューヨーカーの口から
「いやびっくり、AVATARは素晴らしかったし、これまでにない新しいものを感じたから。
ハートロッカーがどれだけ素晴らしい映画か見なくては。」
なんて会話が口々に。。。

そう、ほとんどのニューヨーカーが見ていなかったんですね。
それどころか、去年6月に公開されている事さえ、ほとんどの人が知りませんでした。
宣伝もほとんど無かったし、映画館の数も少なかったからです。

そして、驚くのは、HURT LOCKERの興行成績。
たったの14億円。
これは、オスカー受賞作品としては史上最低の売り上げだそう。

まだピンと来ていない方、
アバターと比べてみましょう。
アバターはアメリカでも世界でも歴代トップの興行成績をあげました。
国内で700億円。なんとHURT LOCKERの50倍です。

イラク戦争の悲惨な現実をわざわざお金を払ってまで映画館で見てやろうという人は
そうはいないわけです。
ビグロー監督自身も授賞式で言っていたように、映画自体が日の目を見る事さえ
なかったかもしれないくらいなんですね。

制作予算に至っては、 THE HURT LOCKER 13億円、
AVATARは200億円以上、と言われているが、
実際にはいくらかかったか正式発表もされていないし、
500億円なんていう声もあるくらい天井知らずのお金。

実際オスカーでは確かに誰も見ていない地味な映画が受賞する事も少なくないんです。
「予算でも、特殊映像でもなく、演技と脚本に作品賞を与える」という伝統があるんですね。
でもここまでの対抗馬をしりぞけて、というのは誰も予想できませんでした。

オスカーに大きな影響を与えるゴールデングローブ賞もAVATARがとっていましたしね。

ではなぜAVATARはHURT LOCKERに勝てなかったの? 

ロイターの記事では「お金はもうけたいが芸術も守りたい、
ハリウッドの二重人格」「SF映画は受賞できないジンクス」などをあげつつ、
「AVATARは俳優に取って代わって人工のマシンが演技している印象がある。
それが俳優たちが主な構成員であるアカデミーに嫌われたのではないか」とも憶測しています。

何はともあれ、
自分の目で見てみない事には。。。というニューヨーカーも多いんです。
実はHURT LOCKERはこちらではもうDVDも出ているので、
それがオスカーの翌日からかなり動いているようです。

実はわたしもあわてて見ました。

その感想もちょっと聞いて下さい。

見て感じたこと、

映画と一口にいっても、
ホントにいろんな映画があるものなんだなー、

特に独断と偏見で言わせてもらうと、
AVATARとHURT LOCKERは対局にある映画。

映像テクノロジーのマジックで非現実の世界に逃避できるAVATARと、

あくまで現実を正面から見据え、見た者が考えさせられる映画、HURT LOCKER

とくにHURT LOCKER はイラク戦争の爆弾処理班の毎日を、
ドキュメンタリータッチで淡々と描く中に、
人間の奥底にある感情がじわじわとあぶり出されてくる、そんな人間ドラマ。

生死ギリギリのところで生まれてくる、人間どうしの絆が素晴らしく描かれていると思います。

日本に住んでいると考えられないかもしれませんが、
アフガニスタンやイラクから、
時にはここニューヨーク出身の兵士が戦死したという情報も入ってきます。
たいてい18歳とか20歳など若い人が多いんですね。
ご家族の気持ちを考えると痛ましい気持ちになります。

でもほとんどのアメリカ人にとっては、戦争はやっぱり遠いものなのかもしれません。

この映画を見ていて感じたのは、
戦争は悲惨ではあるものの、生死の境目というあまりのリアルさに、
私たちの住む平和な現実の方が、夢まぼろしに見えてしまう気がしました。

いったい人間にとって、戦争とは何なんのか、もっと考えるべきなのでは?
と、正面から問いかけてくる、強いメッセージを感じました。

まあそんなマジメな映画ではあるけれど、
主人公の兵士たちがとても魅力的だし、
特にJEREMY RENNERは味のある、そして不良の色気のあるアクターとして、
これからもっと活躍してほしい、彼の出る映画もっと見たいな、と思いました。

日本でもちょうど今公開されているようですが、
見てソンはありません。おすすめします。


佐藤めぐみ   ジャーナリスト、プロデューサー ニューヨーク在住、J-POPからベースボールまで、 日本文化がアメリカでどう受けいられているかを中心にレポートするジャーナリスト、 アメリカのJ-POPファンのためのイベント 「SAMURAI BEAT RADIO(サムライビートレイディオ)」をプロデュース。 BLOG:http://ameblo.jp/meguminyFlowers